ドラマ「愛の不時着」(画像提供:wowkorea)
ドラマ「愛の不時着」(画像提供:wowkorea)
前回は世界で脚光を浴びた「イカゲーム」「パラサイト」に絡めてお話しましたので、引き続きテレビドラマで気づいたことから話を起こします。

 韓国ドラマがお好きな方ならご存じだと思いますが最近日本でも大ヒットした「愛の不時着」を見て日本とドラマの作り方に国民性の違いが出ていると気づきました。と言ってもドラマの内容でなくそのドラマの長さの事です。

 ご覧になってない方のためにドラマの概要を少し。財閥の女主人公がパラグライダーを楽しんでいた時、強風によって予期せず北(北朝鮮)に流れ着き、そこの将校(主人公)と出会い、難関を克服して結ばれるラブストーリーで全16話です。

 私がアレっと思ったのは16話のランニングタイムが全部(1~2話を除いて)違う事です。つまり日本でしたら1回の長さが50分或いは1時間と毎回同じ長さに整えられているのが普通ですが、韓国では違います。もちろん日本のドラマの場合、最終回に限り2~30分延長する場合もありますがこれはあくまでも特別です。

 しかし韓国は特別でも例外でもなく当たり前に毎回放送時間の長さが違います。「愛の不時着」を例に見ますとベースは1時間ですが毎回バラつきがあります。第1回目1時間10分、2回目1時間06分とわずかな差ですが、ドラマが盛り上がる後半7回目からは1時間20分台になり、30分台に跳ね上がり、何と最終回には1時間51分の長さになっています。

 放送に門外漢である私でもこんなにドラマの時間がまちまちだと後の番組の編成やスポンサーにどう説明するのか気が気でなりません。ですが韓国では日本ほど時間や枠を気にしないようです。放送時間だけがまちまちなだけでなく、放送回数も最初決めた長さに縛られず、自由に引き伸ばします。人気が出ると回数を増やすのは朝飯前です。

 試しにTSUTAYAの韓国コーナーに行って連続ドラマの回数を見ればすぐわかります。20回、30回、50回と区切りの良い回数で終わってるドラマと22、54と端数で終わるドラマが陳列されてます。ほぼ間違いなく端数で終わるドラマは視聴率が上がった番組だったと言えます。視聴率が上がるなら予定を変更してでも番組を引き延ばし、実績をあげるやり方は日本の”しくみ”には合わないはずです。

 ちなみに日本で爆発的な人気を博し韓流ブームの引き金になった「冬のソナタ」は20回ときっちりしてますが、中高年層に人気のあった「チャングムの誓い」は54回と端数が出ています。”冬ソナ”は韓国ではそれなりにヒットしましたが番組の回数を増やすほどではなかったと言えます。反面「チャングムの誓い」は50回の予定が高視聴率により4回も延長したそうです。このように見れはビデオ店に行って、どのドラマが韓国で人気があったかがすぐわかると思います。

 私がこの稿で言いたいことは単にドラマの長さの比較でなく、何事にも”きっちり”し、時間、枠内に収めて物事を進める日本人の”予定調和”なスタイルと、中身さえよければ時間や枠にとらわれず物事を進めてゆく”大まかな(雑な)”韓国人の気質との違いを示すためです。

 これと似た例がサッカーでもありました。

 2002年に開催された日韓両国で共催されたワールドカップでの事です。それまで日本も韓国もワールドカップで決勝リーグにコマを進めた実績がなく、開催国の面子にかけても予選リーグを突破するのが悲願でした。下馬評では組織的なサッカーをする日本が一枚上だと言われてました。 

 結果はご存じのごとく両国とも予選リーグを突破し両国民の期待に応えました。けれども日韓の国民性が出たのは決勝リーグでの試合でした。

 日本チームの監督のトルシエ氏が「選手は目標達成(予選突破)した時点で仕事が終わったと緊張感をほどいた。いくら尻をたたいてもモチベーションをあげる事が出来なくて残念だ」という趣旨のコメントをスポーツ紙か雑誌で読んだことがあります。”与えられた仕事をきっちり<枠>内でこなす完璧さ”を追求する日本人の性格がよく表れたコメントだとおもいます。まさしく<予定調和>の世界です。

 一方韓国は予想に反してイタリア、スペインに勝ち準決勝進出を果たしました。いろんな批判も出ましたが、この成果には韓国人の気質が影響したと思います。何事も大まかで調子よければ”予定(枠)を無視して突き進む”気質は前回お話しした韓国の地政学的観点から説明がつきます。

 諸外国から数百回も侵略されてきたため、人と闘い駆け引きしながら生存してきたノウハウが蓄積され遺伝子に刷り込まれいています。ですのでイタリアやスペインという名前を聞いただけでもブルってしまう強敵を相手にひるむことなく蛮勇で挑み、あたかも非力な国民が独裁者を倒したようにのんでかかったのが勝因の一つだった気がします。

 韓国は、”天災”の国日本と違い、異民族や圧政による人間による被害”人災”と格闘してきたDNAがあるので人間に対しておじけづいたりしませんし、”瞬時に相手をのんでかかるかへつらうか判断するしたたかさ”を持ち合わせています。周りに気配り”全体の和”の為に”<個>を抑える行動様式(しきたり)”を重んする日本人にとってはこんな韓国人は非礼でアクが強いと敬遠するのではないでしょうか。

 以上私の私見ですが、韓国でよく使われる言葉でこの稿を終わりにします。
 「ミッコナマルゴナ(信じようと信じまいと)」
 納得のいかない方は次回をお楽しみに^^;

※権鎔大(ゴン・ヨンデ)韓日気質比較研究会代表の寄稿。ソウル大学史学科卒業、同新聞大学院修了。『あなたは本当に「韓国」を知っている?』の著者

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