民主的な手続きにより国家指導者を平和的に選出した韓国の大統領選挙は、グローバル民主主義の発展に希望を投げかけている(画像提供:wowkorea)
民主的な手続きにより国家指導者を平和的に選出した韓国の大統領選挙は、グローバル民主主義の発展に希望を投げかけている(画像提供:wowkorea)
韓国の第20代大統領選挙は、韓国民主主義の成熟を国際社会に示した一大事件であった。「超接戦」を繰り広げたが、敗者は潔く敗北を認め勝者を祝った。勝者は支持者たちの歓喜の中、勝利を満喫しながらも、敗者たちへの慰労を惜しまなかった。事前投票管理において不安な場面がみられたが、選挙管理の主務部署と開票従事者たちは一晩の間に国民の民意をしっかり具現化させた。過半数近くの国民は支持した候補が勝利するという喜びを味わうことができなかったが、選挙の結果を謙虚に受け入れる成熟性をみせた。

民主主義の先進国を自負している米国で、わずか2年前の大統領選後に発生した混乱の様相を我々は記憶している。選挙の結果に不服な現職大統領の支持者たちが、議会に乱入し暴力を行使した。

人権団体“フリーダム・ハウス”などによると「全世界的に民主主義が後退している」という指摘が出ている。むしろ「新たな ”権威主義体制”がユーラシア大陸で強化されている」という懸念すべき様相が現れている。依然として世襲政権が独裁的権力を握っている北朝鮮は言うまでもなく、中国は10年周期の指導者交代システムを ”1人長期政権可能体制”に変化させている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は全体主義に近い体制を強化しながら、近隣の民主主義国家の主権を蹂躙する侵略戦争を起こしている。

そのような中、民主的な手続きにより国家指導者を平和的に選出した韓国の大統領選挙は、グローバル民主主義の発展に希望を投げかけている。勝者や敗者を分かたず韓国人たちは今回の大統領選を通して、多国も感嘆する「民主主義ドラマ」を作ったのである。

韓国の憲法第1条は「大韓民国は民主共和国だ」という宣言である。このような憲法的アイデンティティを守るため、40余年前、大学生たちと市民は街頭に出て「民主主義」を叫んだ。今回の選挙がこのような民意を反映した改正憲法により実施されたという点で、選挙の敗者である現与党のいわゆる86世代(1980年代に大学に入学した60年代生まれ)は、選挙の結果に決して失望してはならない。むしろ自分たちが心血を注いで成し遂げた民主主義制度が、謙虚な選挙の敗北の甘受により一層健全に作動していることを確認したという点で、自負心をもつべきだ。

アジアの辺境に過ぎなかった国が、いつの間にか世界10位圏の経済力をもつようになり、韓流が世界から愛されるようになった根拠には、民主主義の発展が少なからず役立ったと信じている。

新たに発足する政府は、民主主義の必然性と強みを一層自覚し発展させていくだろう。対外的には民主主義のアイデンティティを共有する同盟国である米国を含めた国々と、政治・経済・安保など多様な分野で協力を強化しなければならない。「民主主義の嫡男(ちゃくなん)」を自負するムン・ジェイン(文在寅)政府が、グローバル民主主義連帯の性格をもった ”クアッド(Quad・日米豪印の4か国安保協議体)”の参加をためらったのは理解しがたいことであった。新政府は対外的にジョー・バイデン米政権の提唱するグローバル民主主義連帯に積極的に参加すると同時に、そのような恵沢を受けることのできないユーラシア大陸の国々に、民主主義の強みと活力を説得し拡散させていかなければならない。ロシアなどの攻勢的対外政策により国際秩序が大きく揺れ動いている時期に、韓国は民主主義の成就を基にその役割を拡大させる必要がある。

韓国国防大学のパク・ヨンジュン安保大学院教授

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