韓国人の誇り「サムスン(SAMSUNG)電子」。左から創業者の故イ・ビョンチョル(李秉喆)氏、2代目の故イ・ゴンヒ(李健煕)氏、3代目のイ・ジェヨン(李在鎔)氏。(画像提供:wowkorea)
韓国人の誇り「サムスン(SAMSUNG)電子」。左から創業者の故イ・ビョンチョル(李秉喆)氏、2代目の故イ・ゴンヒ(李健煕)氏、3代目のイ・ジェヨン(李在鎔)氏。(画像提供:wowkorea)
韓国人の誇り「サムスン(SAMSUNG)電子」。2つ目の没落の兆候は、システム半導体事業(ファウンドリ)の技術的限界だ。この部分は、1つ目の兆候(スマートフォン事業の技術的限界)とも相互連携する。2019年にサムスン電子は「2030年にはシステム半導体の分野でも世界1位になる」と宣言した。システム半導体は、メモリー半導体より付加価値が高く、市場規模も3倍大きい。

 サムスン電子はメモリー半導体分野で頭角を見せているだけで、システム半導体の分野においては大して存在感のない状態だ。サムスン電子の立場としては今後、半導体市場で押されないためには必ずシステム半導体の分野で地位を高めなければならない切迫さがあるのだ。

 ところが現実は暗い。例えば、サムスン電子はクアルコム社からシステム半導体「スナップドラゴンAP(8Gen1)」の設計図をもらい、4nm(ナノ・メーター)工程で委託生産(ファウンドリ)しているが、収率が35%しか出ていない。

 収率が35%なら、生産した製品100個のうち35個だけが良品(正常な製品)で、65個は不良品という解釈になる。サムスン電子が自社設計した「イクシノスAP」も4nm工程で生産しているが、収率はさらに低い30%内外の水準に過ぎないことが伝えられている。

 このような不安な工程で生産されたAP(スナップドラゴン、イクシノス)がサムスン電子のスマートフォンに搭載され、発熱問題を起こしているのだ。今回、ヨーロッパで発売したGalaxy S22の場合、「イクシノスAP」が搭載されたが、GPS機能に不具合が出る問題も起きた。

 台湾のTSMCの場合、同じ4nm工程での収率が70%という水準だ。サムスン電子の2倍となる。5nm工程でもサムスン電子の収率は50%にしかならない。一方、TSMC社の5nm工程での収率は80~90%水準を見せていると伝えられている。TSMC社の技術力がサムスン電子を圧倒しているのだ。

 インテルとアップルは次世代3nm工程で生産することになる超精密半導体の物量をすでにTSMC社に割り当てることにし、サムスン電子の顧客であるクアルコムやNVIDIAすら今後、超精密半導体の生産をTSMC側に割り当てようという雰囲気だ。

 この場合、もしTSMCで生産したクアルコムの「スナップドラゴンAP」で発熱問題が起きなければ、サムスン電子はさらに大きな困難に陥るしかない。なぜなら、同じクアルコムの設計図(スナップドラゴン)に従って生産したAPなのに、サムスン電子が生産したAPでだけ発熱が起きたという点が確実に証明されることにより、サムスン電子の生産工程に問題があるという事が表れる状況になるからだ。

 収率が低調だという話は、生産技術力がそれほど不足しているという話になる。結局、インテル、アップル、クアルコム、NVIDIAといった主要顧客がTSMC側に移る理由は、サムスン電子の超精密半導体(システム半導体)の生産技術力に対する不信のせいだと言える。

 サムスン電子は6月から世界でいちばん初めに3nm工程を稼働する予定だが、5nmと4nm工程の場合を考えると収率は、せいぜいのところ30%を超えるのは難しそうだ。TSMCは年末ごろに3nm工程を稼働する予定だが、5nmと4nm工程での場合と同じように収率がサムスン電子を圧倒する水準を見せれば、今後、サムスン電子の立場はさらに狭まるしかない。

 そうなると、国家安保の側面において、半導体の自給化を推進するアメリカの政策と相まってサムスン電子は次第に半導体市場から押される可能性が高いと言える。

 サムスン電子の売上の39%はスマートフォンで、34%は半導体だ。したがって、このようにスマートフォン事業と半導体事業において同時に技術的限界に直面したという事実は、非常に深刻な問題だ。サムスン電子がもしこのような技術的問題を解決できずに尻込みしていたら、サムスン電子は今後、没落の道を歩むしかない。

 技術的な限界と共に、信頼の限界も心配される。サムスン電子は2月にGalaxy S22を発売し、大々的に高い性能を広告した。ところがサムスン電子が広告で出したデータの数値は全てGOSが作動しない状態で出たものだった。

 このようなデータを信じて購入した消費者は、高性能ゲームなど実際にスマートフォンを使用した時にGOSの作動によって、性能(AP、画面解像度など)の低下現象を体験する不便さを感じることになった。「時速300kmの速度で走れるスポーツカー」という広告を信じて購入したが、「エンジン過熱の恐れがあり、時速100km以下でのみ走行可能」という事実を後から知ったのと同じような裏切りを消費者たちが感じたのだ。

 サムスン電子が技術的限界に直面したのは、韓国全体の状況をそのまま象徴していると言える。サムスン電子が日本のSHARPやアメリカのマイクロンから半導体技術を学んで成長したように、今日の韓国はこれまで日本やアメリカの支援のおかげで成長することができた。

 しかし韓国では世の中を変えられる革新的な技術力がない。日本やアメリカの支援のおかげで、例えば1から2や10を作り出せるようになったが、無(0)から有(1)を創造する革新的な能力はないのだ。

 これに関して、ノーベル科学賞受賞の有無は、これに対する傍証となる。GDP10位圏の国家のうち、ノーベル科学賞のない国家は韓国が唯一だ。同時に極東アジア圏において日本はもちろん、中国、台湾もノーベル科学賞を受賞したが、韓国だけがない。

 サムスン電子がメモリー半導体でのみ頭角を見せるだけで、高度の技術を要するシステム半導体の分野で台湾のTSMCに圧倒されていることや、日本政府の韓国向け核心素材(3品目)輸出審査強化措置によって韓国社会全体が混乱に陥ったのは、韓国において革新的な技術力がないために表れる現象だと言える。

 結論的に、今のサムスン電子が直面した危機は、初めから革新的な技術力がないから表れたものだ。したがって、この問題は決して短期間に解決できる性質のものではない。もう少し正確に言うなら、多くの時間を与えると言っても解決できる可能性は希薄だ。

 ただし、過去に日本やアメリカが技術的に韓国をたくさん助けてくれたように、今の日本やアメリカがもう一度、革新的な技術を韓国に提供するなら、韓国は再び跳躍できる可能性があると言える。

 しかしそうなるには、韓国がこれまで日本やアメリカに見せた恩知らずな行為が大きすぎて実現される可能性は、ほぼなさそうだ。このままだとサムスン電子の没落と共に韓国人の自尊心も落ちる状況は避けられない。

(終わり)

※この記事は韓国の保守論客ファンドビルダー氏の寄稿文を日本語に翻訳したものです。翻訳の正確さに対する責任は当社にあります。

※ファンドビルダー氏:ソウル出身。高麗大学卒。韓国人が幼い頃から学び、聞き、見てきた日本関連情報の大部分が歪曲、誇張、捏造などで汚染された状態であることを残念に思い、真実を知らせる趣旨でコラムを書いている。慰安婦、徴用、外交・安保、経済など様々な分野を扱う。

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