ニュージーランドの最高裁判所が中国で殺人を犯した疑いが持たれている在外韓国人を中国に引き渡す決定を下し、現地の韓国人同胞社会から批判が出ている。

 22日付の英紙ガーディアンによると、今月13日、ニュージーランドの最高裁判所は韓国出身の永住権者で、中国当局によって殺人の疑いが持たれている金容疑者の身柄を中国に引き渡すことを決めた。ニュージーランドは中国と犯罪者の引渡し条約を締結していない。しかし、最高裁は中国側が金氏を拷問せず公正な裁判が受けられるよう保障したとして、このように決定した。

 金容疑者は2009年、中国の上海で旅行中に20歳の売春婦を殺害した疑いが持たれている。被害者の遺体は上海のある野山で発見された。解剖では、鈍器で攻撃された傷と首が絞められた跡が発見された。

 当時、中国の公安は法医学の分析結果と現場の証拠をもとに、金容疑者を殺人容疑者として特定した。公安は、金容疑者が知人に「売春婦を殴った」と打ち明けた事実があると説明している。

 金容疑者は、犯人は以前に付き合っていた女性だとして、潔白を主張している。これについてAP通信は、金容疑者の元彼女は中国共産党の関係者と近い人物だと報じた。

 ガーディアンによると、犯罪者引渡し条約も結んでいない中国に、金容疑者を引き渡すことにしたニュージーランド最高裁の送還決定について、国際社会や人権団体、学界などから「危険な先例になり得る」という批判が出ているという。特に、金容疑者が中国で拷問や人権侵害を受ける恐れがあるという憂慮がニュージーランドの韓国人同胞社会から出ている。

 一方、民主主義国家の国会議員による中国問題を論議する超党派連合体「対中議会間連合体」は、ニュージーランドのアーダン首相とクリス・ファーフォイ法務相に抗議書簡を送った。

 英国、オーストラリア、ニュージーランドなど現役議員22人が署名したこの書簡で、彼らは「中国政府の言葉をそのまま信じて国民の安全を危険に追い込んだ。ニュージーランドを越えて、国際社会と人権問題に及ぼす影響が非常に大きい」と憂慮を示した。

 同会に所属するニュージーランド議会のサイモン・オコーナー議員は、「われわれは中国共産党の司法制度を信頼できない。今後、中国がニュージーランドだけでなく、他の国でも共産党反体制人物の身柄引き渡しを要求できるようになった」と指摘した。

 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の中国事務所で局長を務めるソフィー・リチャードソン氏も裁判所の決定について、「現実が分からない、非常に憂慮される判例だ」と批判した。
Copyright(C) herald wowkorea.jp 104