<W解説>ようやく実現した日韓外相会談(画像提供:wowkorea)
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韓国のパク・チン(朴振)外相が18日、就任後初めて日本を訪問し、林芳正外相と会談した。正式な日韓外相会談が開かれたのは約2年半ぶり。当初、朴氏は6月に来日予定だったが、日本の自民党内などから慎重論があり、参院選後に延期されていた。日韓関係改善に意欲を見せているユン・ソギョル(尹錫悦)政権。両国の外相会談がようやく実現し、今後、両国政府は関係悪化の引き金となった元徴用工問題や慰安婦問題の解決に知恵を絞れるか注目される。

 18日、日本に到着した朴氏は記者団に対し、元徴用工問題について「われわれが最も合理的な解決策を模索できる知恵を集める」と話した。また、慰安婦問題については2015年の慰安婦合意に関して「両国政府間の公式合意であり、尊重されなければならない」と述べた。

 林外相との会談は東京・港区にある外務省の飯倉公館で約2時間半行われた。林氏は「元徴用工問題をはじめとする日韓間の懸案の解決が必要だ」と韓国側に具体的な行動を要求。これに対し朴氏は「(日本企業の資産)現金化が行われる前に望ましい解決策が出るよう努力する」と応じた。また、慰安婦問題についても両国間の協議を加速させていくことを確認した。

 日韓の最大の懸案である元徴用工問題をめぐっては、元徴用工が起こした訴訟で、韓国の大法院(最高裁)は2018年10月に新日鉄住金(現・日本製鉄)、11月に三菱重工業に対し、それぞれ原告への賠償を命じた。両社とも履行を拒んだことから、原告側は韓国内にあるこれら企業の資産の差し押さえと売却(現金化)に向けた手続きに踏み切った。大法院は早ければ今秋にも強制執行の開始に向けた最終判断を示すものとみられている。

 一方、日本政府は元徴用工問題に関しては1965年の日韓請求権協定で「解決済み」との立場で、資産の現金化手続きは国際法違反だとして韓国政府に是正を求めている。仮に現金化がなされれば日本政府は制裁措置を辞さない構えで、日韓関係のさらなる悪化は必至だ。

 問題解決のため、尹政権は「官民協議会」を立ち上げ、今月14日には2回目の会合が開かれた。官民協議会は外交部(外務省に相当)のチョ・ヒョンドン第1次官が主宰し、元徴用工訴訟の一部原告の代理人や学者、元外交官らで構成している。

 元徴用工問題に関して韓国では現在、日本企業の賠償を韓国政府が肩代わりしたり、日韓の企業や個人による寄付で基金を作って賠償に充てたりする、いわゆる「代位弁済」案が浮上している。しかし、原告の支援団体は「被告となった日本企業による謝罪が前提だ」と主張しており、「官民協議会」が始動したが、合意形成は難航が予想される。

 また、慰安婦問題をめぐっては、パク・クネ(朴槿恵)政権当時、2015年に日本政府が10億円を拠出し、元慰安婦を支援する財団を設立することなどを確認し、「最終的かつ不可逆的に」解決されたことで合意(慰安婦合意)した。しかし、朴政権に続くムン・ジェイン(文在寅)政権はこの合意を批判し、2018年11月に財団を一方的に解散。日韓の対立は決定的となった。

 朴、林両氏が対面で正式に会談するのは今回が初めて。両氏には「音楽好き」という共通点がある。朴氏は大学時代にバンドを組み、キーボーディストとして活動してきた。一方、林氏もバンドマンとして知られ、自民党所属の国会議員によるバンド「Gi!nz(ギインズ)」のメンバーとして活動する。以前、この共通点を知る韓国メディアの記者から「林外相と共演するならどんな曲にするか」と問われた朴氏は「今の韓日の間には不協和音が多い。これを解消するために、もし韓日が外相間で音楽共演することになれば、『釜山港へ帰れ』がどうかと思う」と答えた。

 「釜山港へ帰れ」は韓国を代表する歌手チョ・ヨンピル氏の楽曲。演歌歌手の渥美二郎氏が1983年にロック調にアレンジしてカバーした作品は大ヒットした。原詞では日本へ行ったきり帰ってこない兄妹が歌われているが、三佳令二氏が作詞した日本語版では、帰ってこない男性を釜山港で待つ女性の心情が歌われている。

 日韓外相会談がようやく実現したことは、両国が関係改善を目指す上で重要な一歩となったと言える。韓国の公共放送KBSは「高官級の対話も全般的に滞っていた中、今回のパク外相の日本訪問は、両国の閣僚級の交流再開に向けた第一歩という観点からも意義がある」と伝えている。

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