<W解説>新型コロナの感染再拡大を迎えた韓国、「自律・責任」が基本の対策で波を乗り切れるか?(画像提供:wowkorea)
<W解説>新型コロナの感染再拡大を迎えた韓国、「自律・責任」が基本の対策で波を乗り切れるか?(画像提供:wowkorea)
韓国政府の中央災害安全対策本部は今月13日、新型コロナウイルスの再流行を想定した防疫・医療対応策を発表した。韓国では新型コロナの感染者が再び増加しつつある。7月第1週の感染者数は6月最終週に比べて87%急増。来月中旬には一日の新規感染者数が最大28万人を超えるとの予測も出ている。夏季の休暇シーズンのさらなる感染拡大を防ぐため示された防疫対策は、ユン・ソギョル(尹錫悦)政権が掲げる「科学防疫」とは程遠いものだとして、専門家の間からも批判が上がっている。

 韓国では変異株のオミクロン株の流行が3月にピークに達し、その後、感染者数は減少をたどっていたが、先月27日、一日の新規感染者数(3423人)が底を打ち、感染者の増加傾向が鮮明になっている。

 韓国政府は今月6日、「感染者の発生が増加に転じたことは明らかだ」(ソン・ヨンレ中央事故収集本部社会戦略班長)との見解を示した。背景には、規制緩和が進む中で、市民の活動量が増えていることや、オミクロン株のうち、より感染が広がりやすいとされる「BA.5」の変異ウイルスが広がりを見せていることなどが影響しているとされる。また、観光ビザの発給を再開するなど、海外との往来も活発になり、外国から感染者が流入する事例も増加傾向にあるとみられている。中央災害安全対策本部のイ・ギイル(李基日)第1総括調整官は、「新型コロナウイルスの再流行の警告ランプが一つ、二つ点灯している。これは、新型コロナの再流行のフェーズに入ったことを意味する、国民全員が気を引き締め、注意することが必要だ」と述べた。

 疾病管理庁は14日、新型コロナウイルスのうち、感染力がこれまでで最も強いとされる「BA.2.75」の感染者が韓国内で初めて確認されたと発表した。感染者は、ソウル近郊のインチョン(仁川)に住む60代で、感染の可能性がある期間に海外渡航歴はない。「BA.2.75」は5月下旬にインドで初めて確認され、その後、米国やカナダ、ドイツ、英国などで感染者が出ている。「BA.2.75」の拡散速度は、米アーカンソー州立大学の研究で、これまで感染力が強いことで知られてきた「BA.5」の3.24倍速いことがわかった。また、ブレイクスルー感染を起こす可能性が高いことも指摘されている。世界保健機関(WHO)は、「BA.2.75」を「懸念される変異株の監視下の系統」に分類した。

 中央災害安全対策本部が13日発表した「再流行を想定した防疫・医療対応策」では、4回目のワクチン接種の対象者を、これまでの「60歳以上または免疫低下者、病院・福祉施設などの入所者」から、「50歳以上または基礎疾患がある18歳以上の成人」に拡大した。ハン・ドクス首相は「4回目の接種で、重症化を予防できる」と意義を強調した。尹大統領も13日、ソウル市内の保健所で4回目のワクチン接種を行い、国民に模範を示した。

 しかし、政府が示した「再流行を想定した防疫・医療対応策」は、4回目のワクチン接種も含め「自律・責任」が土台となっている。飲食店などでの営業時間や人数制限、屋外でのマスク着用義務など、全国民を対象とする防疫措置は取らない。大統領室の関係者は、前政権のコロナ対策が国民に犠牲を強制するものであったと指摘し、今後は国民の自律と責任に基づき、持続可能な防疫対策を展開していく考えを示した。

 かねてから尹政権はコロナ対応について、科学的根拠に基づいた対策を講じると強調してきた。しかし、韓国紙・ハンギョレ新聞は「前政権と差別化できるデータが示されないばかりか、4回目の接種も社会的距離の確保(防疫措置)も全て個人に任せる『自主防疫』では感染拡大を抑制できないと専門家たちは懸念している」と伝えた。その上で記事は「再流行に備えた科学的防疫政策を樹立するには、ワクチン接種と自然感染を通じて形成された免疫水準から把握しなければならない」とし、「だが、全国民の抗体陽性率の調査が始まるのは8月からで、結果が出るのは早くても流行のピークと予想される9月初めだ」と指摘した。

 ハンリム江南精神病院感染症内科のイ・ジェガプ教授やヨンセ(延世)大学セブランス病院感染症内科のイ・ヒョンミン教授も、政府が今回打ち出した「再流行を想定した防疫・医療対応策」を批判し、自主防疫の実効性に疑問を呈した。

 尹政権では初めて対峙する感染拡大期。経済活動との両立を図りつつ、感染の波にどう対処していくのか。

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