ハンギョレ新聞は朝日新聞が19日、「(4年3か月ぶりに)ようやくこぎ着けた今回の(日韓外相)会談だが、参院選のさなかに安倍晋三元首相が銃撃され、死亡する事件が発生。関係改善に向けて前向きな姿勢を打ち出しにくくなった」と報じたことを紹介。その上で「自民党内で巨大な影響力を発揮した安倍元首相の不在で、岸田首相は『保守派』全般に気を配らなければならない状況に追い込まれたのだ」と解説した。
振り返ってみると日韓外相会談も当初は先月に開催予定だったが、今月10日に投開票された参院選後に延期となった。背景には、韓国との関係改善を前のめりに進めることに反対の人が与党・自民党の支持者には少なくなく、投票日を間近に控えた時期に韓国側と過度に接触することは選挙結果に悪い影響を及ぼしかねないとの考えがあったとの見方も出ていた。韓国政府が早期の開催を求めているユン・ソギョル(尹錫悦)大統領と岸田首相との日韓首脳会談は未だ行われておらず、背景には日韓外相会談と同様、参院選を意識したためではないかとみられている。
尹大統領はこれまで一貫して日韓関係の改善に意欲を示してきたが、自民党内には尹氏の就任当初から韓国との関係改善に前のめりになることのないよう求める声が上がっていた。尹氏の就任式をめぐっても、自民党の佐藤正久外交部会長は、「過度な前のめりは間違ったメッセージを出し、足元を見られる。岸田首相が出るということは前例から見てもあり得ない」と述べた。佐藤氏は徴用工訴訟や慰安婦問題など「(懸案が)まだ何も解決していない」とし、首相の出席について「今の日韓状況を考えると違う」と指摘した。最終的に就任式には日本政府として林外相が出席することで落ち着いた。
自民党内の保守派は韓国との関係改善に日本が今の段階で動くことに反対の立場を貫いている。しかし、これまで保守派をまとめていた安倍元首相が死去したことで、岸田首相が韓国への対応を誤れば、政権を支えてきた保守派が一気に離れる恐れがある。こうしたことから、岸田首相も日韓関係改善への対応に慎重にならざるを得なくなる可能性があり、ハンギョレ新聞は「岸田政権が歴史問題で『妥協』したと映れば、保守派の反発を招く恐れがある」とする朝日新聞の報道を引用して伝えた。
今回、日本政府が参院選直後のタイミングで外相会談に応じたのは、日韓関係改善に積極的な尹政権の体力がある任期初期に日韓最大の懸案である元徴用工問題を打開したいとの思惑もあったとの見方もある。
しかし、韓国の世論調査会社のリアルメーターが18日に発表した調査結果によると、ユン大統領の支持率は33.4%で前週比3.6%下落した。一方、不支持率は6,3%上がって63.3%だった。尹大統領の就任後、同社の調査で不支持率が60%を超えるのは初めてのことだ。現在、韓国国会の議席は与党「国民の力」が114議席であるのに対し、野党「共に民主党」は169議席を占めている。それだけでも国政運営が困難だが、それに加え、政権序盤のこの時期に尹氏の支持率が30%台となったことで、対日関係改善への取り組みが一層難しくなったとの見方も出ている。日韓の間には懸案が多く、関係改善には有権者の高い支持に支えられた大統領の強いリーダーシップが必要となるからだ。
訪日した朴外相は20日の記者会見で「4年7か月ぶりに韓日外相の正式会談が実現したこと自体、日本側の真摯(しんし)な対応の一環だと考える。これは韓日関係が変化するシグナルと見ることができる」と強調した。
自民党の保守派をまとめてきた安倍元首相の死、政権序盤での尹大統領の支持率低下。予測できなかったこれらの事態は、今後の日韓関係にどのような影響を与えることになるのだろうか。
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