<W解説>韓国で就学年齢を1歳引き下げる案が浮上も、保護者や教育現場から批判続出(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国で就学年齢を1歳引き下げる案が浮上も、保護者や教育現場から批判続出(画像提供:wowkorea)
韓国政府が、小学校の入学時期を現在の満6歳から満5歳に引き下げる案を推進することを決めた。少子化問題への対策や就学前の教育格差の解消などが狙い。教育部(部は省に相当)のパク・スンエ(朴順愛)長官は先月29日、こうした内容の業務計画をユン・ソギョル(尹錫悦)大統領に報告した。しかし、保護者や教師たちからは、子どもの発達状況や学校現場の状況を全く考えていない一方的な政策だと不満の声が上がっている。

 朴氏は尹氏に対し、「社会的両極化の初期原因は教育格差だ」とし、「就学年齢を1年早め、社会的弱者層が早く義務教育を受けられるようにする」と説明した。これに対し尹氏は、小中高12年という学校教育制度を維持しながら、この案を迅速に進めるよう指示した。

 韓国での現行の小学校入学年齢は満6歳。2008年度から適用された「小・中等教育法」では、「すべての国民は子供または児童が満6歳に達した日が含まれる年の翌年の3月1日に、その子供または児童を小学校に入学させなければならない」と定めている。韓国の学校は3月1日に新学期が始まる。

 例えば、今年3月に小学校に入学した小学1年生は2015年1月1日から12月31日までに生まれた子供たち。2021年に満6歳になったため、現行法では翌2022年の3月1日が小学校入学時期となる。

 今回示された案は小学校入学年齢を1年前倒しするというもので、この案について韓国紙・朝鮮日報は「政府は、就学年齢を早めれば地域や家庭における条件・環境の違いから生じる教育格差を早期に解消できるとみている。1年早く入学すれば卒業も1年早くなるため、若者たちが社会に出て仕事を始める年齢も下がり、労働期間が増えるという効果もある」と解説した。韓国国会予算政策処の資料によると、初めて職に就く年齢が1歳低くなれば、初婚年齢が平均で約3か月早くなるという。

 教育部は今後、年内にも学制改編タスクフォース(TF)を設け、政策研究を進める。また、国民を対象としたアンケート調査を実施。来年には具体的な試案をまとめ、2025年から本格的に実施する計画だが、前年生まれの子供と入学時期が重なれば教員の人数や学習空間の確保などに問題が生じるため、25%ずつ4年かけて移行する案が有力だという。

 しかし、聯合ニュースは「実現までの道のりは険しいものになりそうだ」と伝えている。韓国では、小学校の入学年齢をめぐる議論が1990年代から続いている。90年代後半には早期入学を認める制度が用意されたが、申請が少なく定着しなかった。ノ・ムヒョン(盧武鉉)政権(2003~08年)やイ・ミョンバク(李明博)政権(08~13年)でも少子化対策の一環として、就学年齢を引き下げる案を検討したが、支持は得られなかった。

 今回、教育部が示した案についても、早くも保護者や教員などから批判の声が上がっている。小学生の子供を持つある保護者は、アジア経済の取材に「5歳と6歳の1年の差は他の年齢よりも大きい。自分の子供は今1年生で手がかかるのに、年齢を引き下げるというのはあまりにも現場を知らない」と話した。ネット上では「(尹氏にこの案について報告をした)朴長官が一日でも小学校1年の担任をやってみてから話せ」とのコメントも上がっている。

 また、仮にこの案が2025年から施行された場合、前述のように25%ずつ4年かけて移行する計画で、このため聯合ニュースは「2018~22年に生まれた子供は、同じ時期に進学・卒業する人がこれまでよりも増えることになり、入試や入社などでこれまで以上に条件が厳しくなる」と伝えた。

 また、国民日報は「仮に今の計画通りに施行した場合、小学校教員の養成を拡大させる必要がある。併せて、机や椅子の調整など、学校施設の基準も改正を迫られるなど、大規模な改編が必要となる」と指摘した。

 こうした懸念に対し、教育部は「学制改革などは国家教育委員会とともに十分な国民的議論を経て策定する」としている。しかし、尹氏にこの計画について報告を行った朴氏は報告前、実際にこの政策を実行することになる各自治体の教育当局と事前の協議を公式に行っていなかったことが分かり、波紋を広げている。

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