ペロシ氏は米国で大統領権限を継承する順位が副大統領に次ぐ第2位の要人。今月1日にシンガポールを訪れたのを皮切りにアジア歴訪を開始した。
2日夜には台湾を訪問。米国の現職の下院議長が台湾を訪れるのは1997年のギングリッチ氏以来、25年ぶりのことだった。それだけに、この訪問は関心を集め、世界の航空機を追跡する「フライトレーダー24」でも注目を浴びた。ペロシ氏が台湾入りした2日夜のフライトレーダー24の閲覧者は30万人を突破。到着時点には70万人以上が閲覧して、ペロシ氏を乗せたとみられる米空軍所属の航空機の航路を追った。
3日午前には台北市内の総統府で蔡英文(さいえいぶん)総統と会談。ペロシ氏は「台湾と世界の民主主義を守る」とし、蔡氏は「訪問は米国議会の台湾への揺るぎない支持」と歓迎した。この訪問に対し中国は反発。王毅(おうき)外相は3日、声明を発表し、「公然たる政治的挑発。一つの中国の原則に著しく反し、中国の主権を害するものだ」と非難した。ペロシ氏が訪台に踏み切ったことで、米中の対立激化は避けられない事態となった。
台湾を後にしたペロシ氏は3日午後9時半ころ、韓国の首都・ソウル近郊のオサン(烏山)空軍基地に到着。しかし、韓国政府関係者の出迎えはなかった。この対応に、野党「共に民主党」は「外交で儀典がどれほど重要なことかわかっていないアマチュア外交が引き起こした恥ずかしい惨事」と批判した。
一方、大統領室のチェ・ヨンボム(崔英範)広報首席秘書官は「国会の儀典チームが出迎えに行こうとしたが、遅い時間である上、空軍基地に到着することもあって米国側が遠慮したものと承知している」と説明した。
また、大統領室は3日午前の記者会見では、尹氏が夏休み中のため、ペロシ氏との会談は行わないと発表。この対応にも批判が上がり、韓国紙・朝鮮日報は4日付の社説で「(ペロシ氏は)台湾の蔡総統はもちろん、シンガポールのシェンロン首相、マレーシアのサブリ首相とも会談した」「2015年に来韓したときは当時のパク・クネ(朴槿恵)大統領と会談した」と、今回の対応が異例であることを強調した。
大統領室の関係者は「尹大統領の休暇スケジュールを決めた後に、(ペロシ氏が)ソウルに来るということになり、面会は難しいことから、2週間前に(米側の)了承を得た」と説明した。確かに尹大統領は当初、今月第1週に地方で夏季休暇を取ることを予定していた。しかし、地方での休暇はその後取りやめとなった。大統領室は「夏休みのピーク時に大統領が動けば、その地域で休暇を楽しむ人たちに迷惑をかけかねず、さまざまなことを考慮して決定を下したと理解している」としている。
これに対し、尹氏がソウルに留まることになったのなら、なおのことペロシ氏と会談すべきだとの声も高まった。こうした声を受けてのことなのか、尹氏は4日、ペロシ氏と電話で会談。「ペロシ下院議長一行の韓国訪問は韓米の対北抑止力の証」と述べた。これに対し、ペロシ氏は「今後も韓米が自由で開かれたインド太平洋の秩序を守っていくことを望む」と応じた。
最終的に電話会談で落ち着いたが、当初、尹氏とペロシ氏の会談が設定されなかったのは、ペロシ氏の台湾訪問に強く反発する中国の顔色をうかがったのではないかとの指摘が出ている。
前出の大統領室のチェ広報首席秘書官は「すべては国益を考慮して決めること。韓国政府は米国政府の外交的決定を尊重し、韓米同盟関係を最優先に置くという立場に変わりはない」とした上で「米国議会を軽視する理由はなく、重要な同盟国の要人が来たのに冷遇する理由はない」と述べ、韓国政府が中国を意識したとの見方を否定した。
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