<W解説>韓国が宇宙開発を加速=6月の国産ロケット打ち上げ成功に続き、月探査機「タヌリ」打ち上げ(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国が宇宙開発を加速=6月の国産ロケット打ち上げ成功に続き、月探査機「タヌリ」打ち上げ(画像提供:wowkorea)
韓国初の月探査機となる軌道衛星「タヌリ」が5日(米国時間4日)、米フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられた。タヌリはその後発射体から正常に切り離され、韓国の科学技術情報通信部(部は省に相当)は5日午後2時頃、目標の軌道に乗ったことを確認したと発表した。探査機は太陽の重力などを利用し、約4か月かけて月に向かう。その後1年間、月の上空を周回し、搭載された科学装置によって月の表面を探査することになっている。韓国は2031年に月着陸船の打ち上げを目指している。

イ・ジョン の最新ニュースまとめ

 タヌリは米ベンチャー「スペースX」のロケット「ファルコン9」で打ち上げられた。当初は今月3日午前8時20分(米東部時間2日午後7時20分)ごろに打ち上げられる予定だったが、ファルコン9の点検中にエンジンセンサーの異常が見つかったことから延期になっていた。

 聯合ニュースによると、タヌリには、米航空宇宙局(NASA)が開発した月面を撮影する特殊カメラ「シャドーカム」と韓国で開発された5つの機器が搭載されている。5つの機器は高解像度カメラと変更カメラ、磁場測定器、ガンマ線分光計、宇宙インターネット機器。本体と搭載体を合わせた重量は678キロある。タヌリは韓国語で「月を楽しむ」という意味。

 宇宙インターネット機器に保存されたファイルには、電磁通信研究院のPR映像や、韓国の人気グループBTS(防弾少年団)のヒット曲「Dynamite(ダイナマイト)」などが収められているという。このファイルを再生して地球に送る実験が予定されている。

 打ち上げられたタヌリが、午前9時40分ごろ地上局との最初の交信に成功すると、関係者は喜びと安堵(あんど)の表情を見せた。科学技術情報通信部のイ・ジョンホ長官は「地球の重力を初めて脱して月に向かうタヌリは、韓国の宇宙探査の歴史の第一歩として刻まれることとなるだろう」と語った。その上で、「タヌリは最初の交信に成功し、月への旅を本格的に始めた」とし「タヌリが全ての任務を成功裏に成し遂げるまで、政府は支援と努力を惜しまない」と話した。

 その後、午後に無事軌道に乗ったことが確認されると、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領もコメントを発表。SNSを通じて「タヌリは新資源大国・宇宙経済時代を前倒しする韓国の先発隊だ」と喜びを示しし、「広い宇宙で堂々と翼を広げたタヌリが伝える夢と希望、忍耐のメッセージを思いながら、今年の年末にタヌリから送られる月の表情とBTSの『Dynamite』を楽しみにしている」とつづった。

 タヌリは地球や太陽の動力を利用する方式で移動し、予定では12月16日に月周回軌道に乗せる。そして同月31日に目標とする月の上空100キロの軌道に入り、本体の機能テストなどを経て来年2月から12月まで任務を遂行する。具体的には月着陸候補地の探索と表面鉱物の分析、磁場・放射線観測、宇宙インターネット技術検証などを予定している。

 月探査は既に日本や米国、ロシア、欧州連合(EU)、中国、インドが実施している。タヌリが12月に月に到着し探査任務を始めれば、韓国は世界で7番目の月探査国になる。韓国メディアは「韓国の宇宙技術が先進国水準に発展したことを意味する」と伝えた。

 韓国は近年、宇宙開発に力を入れており、昨年には日本も参加する米国主導の有人月探査「アルテミス計画」に加わった。今年6月には韓国が独自開発した初の国産ロケット「ヌリ号」を打ち上げ、搭載した衛星を目標の軌道に乗せることに成功。「自力で衛星の打ち上げが可能な世界7番目の国になった」と歓喜に沸いた。タヌリは7年かけて開発し、2367億ウォン(約236億円)の予算が割り当てられた。

 現政権は、宇宙産業を本格的に育成すると意気込んでいるが、課題もある。今年の韓国政府の宇宙産業予算は7340億ウォンで、米国(約69兆ウォン)や中国(約13兆ウォン)、日本(約5兆ウォン)に比べはるかに少ない。専門家からは「政府が大々的な投資で後押しする必要がある」との声が上がる。また、米国の航空宇宙局(NASA)、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)のようなコントロールタワーも今後必要になるだろう。

Copyrights(C)wowkorea.jp 3