中央日報が、産経新聞の報道として伝えたところによると、官民協議会は基金設立案を最も現実的な案として検討しているという。基金設立案は2019年に当時のムン・ヒサン(文喜相)国会議長らが提起したことがある。文氏は日韓の企業や政府も参加して約280億ウォン(現レートで約28億円)規模の基金を作り、元徴用工訴訟の原告ら約1500人を対象に慰謝料などを支払う案を解決策としてまとめ発表した。しかし、当時、原告の支援団体からは「被害者にとって大変に侮辱的で、これまで守ってきた尊厳を害するものだ」と反発の声が上がったほか、日本の国会議員らからも批判が相次いだ。結局この案はとん挫した。
現金化が差し迫った状況下、日韓関係改善に意欲を見せるユン・ソギョル(尹錫悦)政権は先月、問題解決に向け官民協議会を発足させた。外交部のチョ・ヒョンドン第1次官が主宰し、学者、元外交官のほか、当初は一部の原告側弁護士もメンバーに加わった。
これまで、元徴用工問題の解決案として、韓国政府が日本企業の賠償を肩代わりする形での代位弁済案が議論されてきた。しかし、先月14日に開かれた官民協議会の2回目の会合に出席した法律の専門家はこの案を遂行するためには「原告全員の同意が必要」と説明。原告側は被告企業が関わることなく韓国政府が肩代わりすることに強く反発していることから、この案は事実上困難となった。そのほか、国際司法裁判所での解決や原告と被告企業が直接協議する案も挙がっていたが、日本側の理解が得られないことから、これらの案も現実的でないと判断されているという。
協議会は今後、基金による代位弁済案を有力案として議論を深めていくものとみられる。しかし、中央日報は「基金設立を可能とするためには国会での特別法の制定が必要になるなど、多くの困難が予想される」と指摘した。一方、産経新聞の取材に応じた協議会のメンバーのパク・ホンギュ高麗大教授は「協議会の議論が8月中にまとまれば、政府が検討した上で安倍晋三元首相の国葬を終えた10月頃、日本側に解決策を示すことになるのではないか」と推測した。
こうした中、官民協議会の3回目の会合が9日に開かれた。協議会をめぐっては、外交部(外務省に相当)が先月、最高裁に対し問題解決に向けた外交努力を説明する意見書を提出したことに訴訟の原告側が反発。「外交部が提出した意見書は事実上、現金化に対する大法院の決定の先送りを求めるものだ」「被害者側との信頼関係を完全に失わせる行為だ」などと怒りをあらわにし、今後、協議会への不参加を表明した。このため、この日開かれた協議会は原告側が全員不参加の中で開かれた。外交部は「これまで2回の会合で議論された内容を基に意見交換を行った」としている。
協議会をめぐっては、メンバーになっている専門家の間でも脱退を検討する声があるとされる。原告側が全員不参加の中で、今後、基金設立案に対する議論が深まっていくかは不透明だ。
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