韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は15日、光復節(日本による植民地支配からの解放記念日)の記念式典で演説した。日韓関係改善に改めて意欲を示した一方、元徴用工問題や慰安婦問題などへの具体的な言及はなく、元慰安婦などからは批判の声が上がっている。

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 演説の中で尹大統領は、日本について「かつてわれわれの自由を取り戻すため、政治的な支配から抜け出す対象だった日本は、今や世界市民の自由を脅かす挑戦に立ち向かい、共に力を合わせていかなければならない隣国だ」と指摘。その上で「韓日関係が普遍的な価値を基盤に、両国の未来と時代的な使命に向かって進むなら、歴史的問題もきちんと解決できる」と強調した。

 また、1998年に発表された日韓共同宣言に言及。「両国の政府や国民が互いに尊重し、経済や安全保障、社会、文化にわたる幅広い協力を通じて、国際社会の平和と繁栄に共に寄与しなければならない」と述べた。

 日韓共同宣言は韓国ではしばしば「キム・デジュン(金大中)、小渕宣言」と表現される。1998年10月、訪日した金大統領が、小渕恵三首相(肩書はいずれも当時)と共に署名した。両国における緊密な友好協力関係を高い次元で発展させ、21世紀に向けた未来志向的な関係を構築することで認識を共有。その後の日韓交流の礎となり、宣言によってその後、経済や文化、人的交流は活性化した。尹氏は大統領選候補者の時から「共同宣言には韓日関係を発展的な方向に導けるほぼすべての原則が盛り込まれている。この精神と趣旨を継承し、韓日関係を発展させれば、両国の未来は明るいはずだ」との考えを示していた。

 この日の演説で尹氏は、同宣言を継承する考えを改めて示した上で、「両国の政府と国民が互い尊重し、経済、安全保障、社会、文化にわたる幅広い協力を通じて、国際社会の平和と繁栄に共に貢献すべきだ」と述べた。

 一方、演説では元徴用工問題や慰安婦問題などへの具体的な言及はなく、昨年のムン・ジェイン(文在寅)大統領の演説とは対照的だった。文氏は昨年、具体的な解決策こそ示さなかったが、日韓の懸案について、「国際社会の普遍的価値と基準に合う行動と実践で解決しなければならない」と述べた。

 元慰安婦のイ・ヨンス(李容洙)氏は尹氏のこの日の演説について「なぜ光復節に日本との関係改善の話だけをし、解決されていない歴史問題と慰安婦問題に対する言葉は一言もないのか」と批判した。その上で李氏は「日本がどれほど歴史をねじ曲げ、私たちの名誉を踏みにじろうと、日本の機嫌を取ることのほうが重要なのか、それが自由と人権、法治を尊重することなのか」と疑問を呈した。

 韓国紙の中央日報は、尹氏が演説の中で日本について「共に力を合わせなければならない隣国」と表現したことについて、「文前政権が日本を『最も近い隣国』『近隣諸国』などといった表現にとどめたことを勘案すると、より強力な韓日関係改善の意志が反映されたといえる」と解説した。

 また、同紙は演説の文中の「韓日関係が普遍的な価値を基盤に、両国の未来と時代的な使命に向かって進むなら」という部分に着目。「『普遍的価値』と『時代の使命』などの抽象的表現が主を成しているが、結局、韓日関係改善という大前提の下で、慰安婦問題、強制徴用(元徴用工)問題を扱わなければならないという点を強調したものと分析される」と解説した。

 また、韓国の公共放送KBSは「演説での最大のキーワードは『自由』だ」とし、「33回も登場した」と伝えた。尹大統領は演説で「日本の植民地時代の独立運動は、国民が主人である民主共和国、自由と人権、法治が尊重される国をつくるためのものだった。自由という価値に基づく独立運動の精神を、世界の市民の自由を守り、拡大することで継承・発展させなければならない」と呼び掛けた。

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