停滞する前線の影響で、韓国は8日からソウルなど首都圏を中心に大雨が降り、甚大な被害が出た。ソウル市トンジャク(銅雀)区では8日夜、1時間に141.5ミリの猛烈な雨を観測。これまで最高だった1942年8月に観測された1時間に118.6ミリの降雨量を80年ぶりに上回った。また、1時間あたりの雨量が136ミリを超えた地域もあり、韓国メディアは「115年の観測史上、最大規模の記録的大雨」と伝えた。各地で浸水被害が発生し、多数の車が水没したほか、鉄道も一部が運休するなど、交通機関にも影響が出た。
今回の豪雨では、ソウル市内の半地下住宅で暮らす3人も犠牲となった。朝鮮日報は「月家賃や高額のチョンセ(契約時にまとまった額の保証金を賃貸人に預け、月家賃がない不動産賃貸方式)を支払うのが難しく、半地下部屋や作りがしっかりしていない家が多い地域で暮らす低所得者層に特に甚大な被害をもたらした」と指摘した。
ソウル市クァナク(冠岳)区シルリム(新林)洞にある低層集合住宅の半地下の部屋で暮らしていた小学校6年の子供とその母親、一緒に暮らしていた叔母が死亡したほか、銅雀区サンド(上道)洞の半地下部屋に住んでいた50代の女性も犠牲になった。一家が暮らしていた地域は、半地下がある低層集合住宅が密集している。
9日には新林洞の半地下の被災現場を尹大統領が視察。尹氏は社会的弱者であるほど、災害時に最も脆弱(ぜいじゃく)となる現実を指摘。「彼らが安全であってこそ、初めて大韓民国が安全になる」と述べた。
韓国紙の中央日報は尹氏が現場を訪問した際、フォーマルな革靴を履いていたことを指摘。記事は「本当にいぶかしかった」とし、過去の災害で現場を訪れた大統領の例を挙げ「ノ・ムヒョン(盧武鉉)元大統領、イ・ミョンバク(李明博)元大統領が長靴を履いた。唯一の女性大統領だったパク・クネ(朴槿恵)大統領もパンプス姿だった」とした。その上で記事は「単純になぜ運動靴を履かなかったのかと問い詰めたいのではない。靴一つ見ても、今、大統領室が(今回の豪雨災害に)どう動いているのかをうかがい知ることができる」と指摘。「小学生の娘を育てながら、発達障害の姉まで扶養した40代の女性が半地下の部屋に流れ込んだ水に飲まれ、苦痛の中で死んでいく姿を思えば、誰が軽い気持ちで現場を訪れるだろうか」と尹大統領に疑問を投げかけた。また、ハンギョレ新聞によると、現場で尹氏からは「なぜ前もって避難できなかったのかわからない」との発言も飛び出したという。
また、「国民の力」のキム・ソンウォン(金成願)議員は、11日に同僚議員らとソウル市内で復旧ボランティアに参加した。その際「正直なところ、もう少し雨が降るといい。写真が上手く撮れるように」と発言。批判が高まり、同日午後には「厳しい状況の中、軽率だった。深く反省し、謝罪する」とし、発言を撤回した。また、「今回のことで、私や『国民の力』の水害復旧に対する誠意まで疑うのはやめていただけたらと切に願う」とも付け加えた。12日に会見を開いて改めて謝罪し「国民の皆様のためにできることがあれば、死力を尽くす」などと語った。
しかし、批判は収まらず、学生団体のメンバー約100人は12日、「国民の力」の党本部前で抗議集会を行った。「国民の血の涙がお前たちにとっては『映える』ものなのか」などと書かれたプラカードを持って金議員の議員辞職を求めたほか、社会的弱者への支援策を示すよう訴えた。
前出の中央日報は「政治の基本は共感で、共感は行動に表れる」とし、「そのような最小限の共感能力なくして政治は不可能だ」と断じた。
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