「チップ4」は米国政府が提案したサプライチェーンネットワーク。米国は韓国のほか、台湾、日本にも参加を促している。半導体の設計に強い米国と設備・素材に強みを持つ日本、高い生産能力を持つ韓国と台湾が半導体における協力関係を強化し、安定したサプライチェーンを確保することが狙いだ。一方で、半導体分野で急速な追い上げを見せる中国を排除する性格も併せ持つため、中国は韓国が「チップ4」への参加を検討していることをけん制している。
中国の邢海明(シン・ハイミン)駐韓大使は先月25日、韓国の与党「国民の力」の半導体産業競争力強化特別委員会のヤン・ヒョンジャ委員長と面会。「中国は公平かつ公正な市場の原則を堅持し、外部の干渉を排除する。半導体などの分野での協力を強化し、グローバルサプライチェーンを守る上で韓国と協力する」と語った。シン大使はこの日、産業通商資源部(部は省に相当)のアン・ドックン通商交渉本部長とも面会し、両国間の経済・貿易関係の発展や実質的な協力に関して意見を交わした。こうしたケイ大使の動きについて韓国メディアは「チップ4」に韓国が参加しないよう促すねらいがあると伝えた。
また、中国外交部の趙立堅報道官は先月26日、「中国は人為的に国際貿易規則を破壊して世界市場を二分することに反対する」と述べた。さらに趙報道官は「昨年、中韓貿易は前年より26.9%増加して3623億ドル(約49兆円)に達した。これは韓米、韓日、韓・欧州貿易の合計を上回る」とし、中韓貿易の重要性を強調。「チップ4」への参加を検討している韓国の動きをけん制した。
韓国の昨年の半導体輸出の60%は中国市場向けだった。また、中国国内には韓国企業の半導体工場が多数ある。仮に、韓国が「チップ4」に参加した場合、中国による輸入規制や企業に対する制裁などの措置が取られる可能性が指摘されている。
しかし、KB証券は「中国は先端産業の育成のため、海外依存度の高い半導体の輸入比率の拡大が必須な状態であることから、最もリードした半導体技術の競争力を確保している韓国の半導体企業への規制は中国産業の成長低下へとつながる可能性が高い」と分析。このことから、韓国がチップ4に参加しても、中国が韓国の半導体企業を直接規制する可能性は低いとの見方を示した。
その上でKB証券は、「中国は、米国と直接競争する可能性の低いNAND型フラッシュメモリと、ディスプレイ産業の育成に当分の間集中するだろう」とし、「中国の(メモリ半導体メーカー)YMTCや(ディスプレーパネル最大手)BOEを積極的に支援するだろう」と見通した。
こうした中、韓国のパク・チン(朴振)外交部長官(外相)は中国を訪問し、今月9日に王毅外相と会談した。王氏は中国と韓国の国交正常化から30年になることに触れ「両国の関係はより成熟し、自主的で堅固になるべきで、外部の影響を受けてはならない」と述べた。朴氏は訪中前、チップ4について中国の反発を念頭に「特定の国を排除するためのものではない」と強調していたが、王氏は「互いに安定的で円滑なサプライチェーンを守らなければならない」とし、韓国がチップ4参加の検討も含め、米国との同盟関係重視の姿勢を強めていることに、改めて懸念を示した。
今月末もしくは来月初めには、チップ4の議題の詳細や参加条件などについて話し合う予備会議が開かれる予定となっており、韓国はこの会議に出席する意向を米国側に既に伝えたという。韓国の公共放送KBSによると、中国がチップ4に懸念を示していることから、韓国は今後予備会議など、チップ4について協議する過程で、特定の国を排除しない方向でサプライチェーン協力を進めるべきだとする意見を提示するものとみられるという。
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