会見冒頭、尹氏は「先日の休暇中、政治を始めて1年余りの時間を振り返り、就任100日を迎えた今も『始まりも国民、方向も国民、目標も国民』ということを胸に刻んでいる」と語った。大統領に就任してからの日々を振り返り「世界経済の不安定性が拡大する危機状況に体系的に対応する中、経済を回復させるために努力してきた。経済の未来のための産業の高度化、未来戦略産業の育成にまい進してきた」と成果を強調した。その上で、「国民生活の問題に最優先で取り組み、韓国経済の成長エンジンと未来の成長産業確保に渾身(こんしん)の力を注ぎたい」と意欲を示し、「国民の意向から少しも外れないようにする」と語った。
そのほか尹氏は、政権の成果として、バイデン米大統領との首脳会談や、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議への出席、ポーランドへの兵器輸出、初の国産ロケット「ヌリ」の打ち上げ成功、キンポ(金浦)~羽田(東京)の航空路線再開などを挙げた。
一方、「この間に国民の応援も厳しいட責もあった」とし、「国民の思いをくみ取り、最善を尽くしていく」と語った。
また、日韓関係についても言及し、6月のNATO首脳会議の際、岸田文雄首相と言葉を交わしたことなどを挙げて「未来志向の関係の土台を作った。日本との関係を早く回復し発展させていく」と述べた。その上で、日韓最大の懸案である元徴用工問題について「日本が憂慮している主権問題と衝突せずに原告が保障を受けられる方法を考えている、私は肯定的に見ている」と述べた。
今年3月の大統領選に当選し、5月に第20代韓国大統領となった尹氏は、就任演説で「自由民主主義と市場経済の体制を基盤に国民が真の主人となる国へと再建し、国際社会で責任と役割を果たす国をつくらなければならないという時代的な要求を受けてこの場に立った」と表明。「問題を解決しなければならない政治が民主主義の危機により本来の機能を果たしていない」と指摘した上で、「国の内部の過剰な集団的対立により真実がわい曲され、各自が見聞きしたい事実だけを選択したり、多数の力で相手の意見を抑圧したりする『反知性主義』が民主主義を危機に陥れている」とし、「この困難を解決していくため、普遍的な価値を共有することが極めて重要だ。自由の価値を正確に認識し、再発見しなければならない」と訴えた。
就任当初は、権威主義の象徴だった大統領府(青瓦台)を開放したり、出勤時に記者のぶら下がり取材に応じたりするなど、「国民との距離を縮め、疎通する大統領像を具現化した」との評価が高かった。しかし、閣僚人事をめぐって元検事の尹氏は検察出身者を多数登用。「偏重起用」と批判を招いたほか、与党「国民の力」内での内紛が続いており、支持率は20%台まで下落している。
この日の会見は、予定を10分以上超過し、尹氏の発言と記者との質疑応答を合わせて約1時間開かれた。記者から支持率が下落傾向にあることを問われた尹氏は「支持率そのものより、世論調査に表れた民意を謙虚に受け止めることが重要だ」と述べた。
一方、野党「共に民主党」は尹政権を批判。同党のウ・サンホ議員は「100日を迎えた尹政権の成績表はお粗末だ。大統領選挙の過程でも心配したが、いざふたを開けてみるとあまりに準備ができていなかった。国民の失望は大きく、刷新が必要との指摘があるが、刷新の意志が全く見えないことも懸念される」と指摘した。
また、韓国メディアのヘラルド経済は16日、尹氏の就任100日を前にコラムを掲載。「発足からわずか約3か月で、ここまで低調な支持率を出した政権はほとんどない」とし、「このような状態が続けば、尹氏のリーダーシップそのものが失われるかもしれないという危機感さえ頭をよぎる」と懸念を示した。その上で同メディアは「何よりも尹氏の心構えが重要だ。検察や知人などに限定された人材プールの範囲をまず広げることが急務だ。多様な人材を等しく登用すれば、国政の縮まった『血管』は容易に通りが良くなるものだ」と指摘した。また、「国家指導者は批判も快く受け止めなければならず、場合によっては『泣いて馬謖(ばしょく)を斬る』(自分が大切にしている人であっても、違反者は処罰するという意味)ように、人事の断行も辞さなければならない」とし、「尹氏に意志さえあれば、いつでも可能なことだ」と投げかけた。
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