今回の米韓合同軍事演習は、韓国でユン・ソギョル(尹錫悦)政権が発足してからは初めての定例演習となり、先月22日に始まった。今回の演習の名称は「ウルチ(乙支)フリーダムシールド(自由の盾)」。演習では実際に大規模な兵力を投入した本格的な野外機動訓練が約4年ぶりに再開された。
夏季演習は、2018年の米朝首脳会談や南北首脳会談など、北朝鮮との融和ムードの高まりや新型コロナウイルスの感染拡大を受け、縮小、または廃止されていた。1975年に始まり、2017年まで行われていた「乙支フリーダム・ガーディアン」は2018年以降、合同指揮所訓練(CCPT)に置き換えられ、米韓両軍からは、訓練不足や弱体化を懸念する声が出ていた。
しかし、今年5月に大統領に就任した尹氏は、同月に行われた米韓首脳会談の終了後にバイデン氏と発表した共同声明で「北朝鮮の進化する脅威を考慮し、朝鮮半島とその周辺での合同演習及び訓練の範囲と規模を拡大するための協議を始めることで合意した」と明らかにした。
今回の定例演習は「ウルチ・フリーダムシールド」に名称変更し、演習規模を拡大。「フリーダム(自由)」は米韓同盟の変わらない価値を、「シールド(盾)」は米韓同盟の北朝鮮に対する強い抑止力と防衛目的の正当な演習であることを示している。
演習は「戦時体制への転換と首都圏防衛」と「首都圏の安全確保に向けた反撃作戦の練度向上」の2部構成で行われ、戦車や自走砲、多連装ロケット砲などを投入した実弾射撃訓練も実施。尹氏は先月22日、「この5年間、縮小されていた演習を正常化する。朝鮮半島の平和を維持するためには、韓国の隙(すき)のない安全保障体制が土台にならなければならない。実践と同じ演習だけが、韓国国民の生命と国家の安全保障を堅固に守ることができる」と強調した。
今回の演習を受けて、北朝鮮は1日、韓国との窓口機関である祖国平和統一委員会のホームページで談話を発表。「わが国を不意に侵攻するための先制攻撃の演習であることは明らかだ。朝鮮半島を核戦争の場にしてしまおうとする米国などの野望は変わっていない」と非難。尹氏については「南北関係を完全に壊し、朝鮮半島情勢を戦争の瀬戸際に追いやっている特級犯罪者だ」と痛烈に批判した。
批判は演習終了後も続いており、北朝鮮の対外向け週刊紙「統一新報」は4日、「韓国で行われる各種の演習は、不純な目的から始まる戦争勃発の導火線」と警告。「米国の核の傘を信じ、超強大国である共和国に対抗するという尹錫悦は自ら災いを招いている」とし「尹錫悦一味はわが民族の主敵であり、相手にしてはならず、徹底的に撲滅すべき災い」と非難した。また、対外宣伝サイト「朝鮮の今日」も「今回の演習は、わが共和国に対する武力侵攻の試みを露骨に示した戦争試演会」と主張した。
北朝鮮は今後、対抗措置として弾道ミサイルを発射する可能性が指摘されている。韓国紙の東亜日報は1日、北朝鮮の複数の地点で弾道ミサイルの発射準備と受け取れる動きがあると伝えた。
また、2017年以降、7回目の核実験を行う可能性も従前から指摘されており、1日(現地時間)には日米韓の安保担当高官の3者会談が米ハワイ・ホノルルで開かれた。秋葉剛男国家安全保障局長、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、韓国のキム・ソンハン国家安保室長は会談で、北朝鮮の完全な非核化に向けて日米韓が緊密に連携することを確認した。キム室長は会談後、記者団に「北が7回目の核実験を行う場合、これまでとは確実に異なる対応を取る」と警告した。
今後の北朝鮮の動きが注目される。
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