<W解説>帰省自粛ムードから一転、今年の韓国のチュソク(秋夕)は?=日常回復への喜びと「名節症候群」再発の懸念(画像提供:wowkorea)
<W解説>帰省自粛ムードから一転、今年の韓国のチュソク(秋夕)は?=日常回復への喜びと「名節症候群」再発の懸念(画像提供:wowkorea)
韓国は10日に日本のお盆にあたる「チュソク(秋夕)」を迎える。秋夕の前後は連休になり、今年は新型コロナウイルスによる外出規制もないことから、帰省ラッシュも大規模なものとなりそうだ。秋夕を控える中、韓国のソンギュンカン(成均館)儀礼定立委員会は5日、茶礼床(先祖に供える膳)の簡素化に関する「茶礼床標準案」を発表した。茶礼は先祖を敬う儀式だが、若い世代を中心にこれが負担と感じる人も少なくない。秋夕前の準備で忙しくストレスをためこみ、秋夕後に体調を崩す「名節症候群」なる言葉まで存在する。

 秋夕はソルラル(旧正月)と並ぶ韓国の代表的な名節で、親戚一同が故郷に集まって先祖の墓参りをしたり、食事をしたりするのが一般的な過ごし方だ。「民族大移動」と言われる大規模な帰省ラッシュで高速道路の大渋滞や、人でごった返すソウル駅の光景はお決まりだった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で一昨年と昨年は状況が一変。帰省を自粛する人が多く、墓の草刈り代行サービスや、オンライン墓参りなども登場した。

 そんな中、昨年は、主婦などからは秋夕の料理の準備から解放され安堵したとの声も聞かれた。秋夕では、数週間前から親戚などへの贈り物の購入や、前述の茶礼で使用する供え物の調達などで忙しくなる。お膳には野菜のナムルや肉、魚などたくさんの供え物が載るため、準備には相当な労力が必要になる。また、親戚付き合いなどに過度な精神的負担を感じる人もいる。秋夕が終わると脊椎や関節に異常を感じたり、めまいや頭痛、腹痛、動悸(どうき)などの症状を訴えたりする人が増えるという。「名節症候群」と呼ばれ、特に女性に多く見られる症状という。また、名節の準備は女性に集中しがちで、何もしない夫に妻が愛想を尽かし、関係が急速に悪化したあげく、離婚に至るケースもあるという。

 就職情報サイトのジョブコリアが2019年に会社員の男女1921人を対象調査したところ、名節の料理や祭祀の膳の準備などで、その後うつ症状が現れたと答えた人は、10人中4人に上った。昨年の秋夕前、この結果を報じた韓国紙の中央日報は、「名節症候群」について「世界のどこにもない、韓国だけにある唯一の疾患と指摘する声もあるほどだ」と指摘した。

 昨年の秋夕は、韓国は新型コロナの「第4波」真っただ中で、政府は秋夕後の感染のさらなる拡大を警戒。帰省する場合はワクチン接種完了またはPCR検査後、最少人数とすること、また、高齢の親がワクチン未接種の場合は見送ることなどを呼び掛けた。しかし、今年は自粛ムードから一転、帰省を予定している人が多い。韓国農水産流通公社が7月19~25日にかけてオンラインで実施した調査の結果によると、秋夕に帰省する予定のある人は44.8%で昨年に比べ18.2%上昇した。

 かつての日常に戻りつつあることは喜ばしいことであるが、3年前までのような秋夕の「負担」を再び強いられることになると懸念する人もいる。

 こうした中、成均館儀礼定立委員会は簡素化した茶礼床の料理を紹介。基本的な料理は伝統餅のソンピョン、ナムル、クイ(焼き物)、キムチ、果物、酒の6種で、これに肉類、魚、餅を加えることができるという。同委員会は「先祖を敬う心は料理の数で決まるものではないため、多くの料理を作ろうとしなくてもよい」と説明した。

 今回、同委員会が発表した「茶礼標準案」は国民を対象としたアンケートの結果や礼法などを踏まえて策定された。同委員会のチェ・ヨンガプ委員長は「茶礼は先祖を敬う子孫の真心が込められた儀式だが、これが苦痛になったり、家族不和の原因になったりするのは決して望ましいことではない」とし、「今回の標準案の発表が、経済的負担の軽減はもちろん、男女や世代の対立を解決し、実質的な茶礼の出発点になることを願う」と話している。

 今年の秋夕はコロナ後の名節のあり方を考える機会にもなるかもしれない。

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