ユン・ソギョル(尹錫悦)政権は日韓関係改善に意欲を見せており、とりわけ、日韓最大の懸案である元徴用工問題は最優先で精力的に取り組んでいる。解決を急ぐ理由は元徴用工訴訟で韓国の大法院(最高裁)が、原告が差し押さえた日本企業の韓国内資産の売却(現金化)命令を出す可能性があるため。仮に現金化がされれば日本政府は制裁措置を取る構えで、そうなれば日韓関係は破綻するとさえ言われている。現金化は絶対に避けなければいけないという考えでは日韓両政府とも一致している。
今年4月以降、大法院では三菱重工業が現金化命令を不服として行った再抗告についての審理が行われていたが、審議の主審を務めた大法官(最高裁判事)が2日に退官した。一部報道ではこの大法官が退官する前に最終判断が出されるとの見方があったが、退官に伴い日韓両政府が懸念する現金化に向けた最終判断はひとまず先送りされる見通しとなった。
尹政権は問題解決を図るための官民協議会を7月に発足させた。外交部のチョ・ヒョンドン第1次官が主宰し、学者や元外交官のほか、当初は原告側の代理人らもメンバーに加わっていた。チョ第1次官は初会合の終了後、「今日のような対話の場が、問題解決の重要な推進力になる」と強調した。しかし、外交部が先月、大法院に対し問題解決に向けた外交努力を説明する意見書を提出したことに原告側が猛反発。「被害者側との信頼関係を完全に失わせる行為だ」とし、協議会に今後参加しないことを明らかにした。そのため、3回目以降は原告側の関係者が全員不参加で進められ、5日に開かれた4回目が最後となった。韓国政府は今後、有識者や原告側から寄せられた意見を参考にして日本側に提示する解決策を検討する方針。外交部のイム・スソク報道官は6日の定例会見で「非公開で出席者を制限する形の協議会はこれ以降開催されないが、4回目の協議会が意思疎通の終わりではない」と強調した。
朴氏は協議会に原告側が不参加を表明して以降、今後は直接会って意見を聞く考えを示し、2日の原告宅訪問が実現した。当事者に誠意を尽くす姿勢を内外にアピールする狙いもあるとみられる。朴氏が原告と会ったのは今回が初めてで、原告の支援団体「日帝強制動員市民の集まり」を通じ実現した。
朴氏がこの日面会したのは南西部のクァンジュ(光州)市に住むイ・チュンシク(李春植)さんとヤン・クムドク(梁錦徳)さん。李さんは「補償を受けられず裁判をしたが、まだ解決していない。生きているうちに、問題が解決することを望む」と語った。聯合ニュースによると、朴氏は「生き証人だと考えている」として李さんに対し、韓国式の最も丁寧なお辞儀「クンジョル」をしたという。クンジョルは、ひざまずいて両手の甲を額に当て頭を深々と下げる手順で行うもので、韓国が間もなく迎える旧暦のお盆「チュソク(秋夕)」や旧正月(ソルラル)、結婚式で新郎が両親へあいさつする際などでも行われる。韓国紙・中央日報によると、朴氏は李さんに対し「秋夕のあいさつをさせてほしい」とも述べたという。また、梁さんは朴氏に「小学6年生の時、日本に行って死ぬほど働かされたがお金はもらえなかった。日本から謝罪を受けるまでは死んでも死にきれない」と記した手紙を渡した。
朴氏は面会後、記者団に対し「今日聞いた話は整理して日本にも伝える。最も重要なことは歴史を直視して未来へ進むことができるような日本の立場の表明だ」と語った。一方、原告が前述の協議会への不参加を決める一因となった、外交部が大法院に提出した意見書については、撤回する考えがないことを明らかにした。支援団体「日帝強制動員市民の会」のイ・グゴン理事長は「今日の(原告との)面会が『見せかけのショー』にならないことを願う」と話した。
元徴用工問題をめぐっては、戦前に日本企業に強制労働をさせられたと主張する元徴用工が提訴。韓国の大法院(最高裁)は2018年10月に新日鉄住金(現・日本製鉄)、11月に三菱重工業に対し、それぞれ原告への賠償を命じた。両社とも履行を拒んだことから、原告側は韓国内にあるこれら企業の資産の差し押さえと売却(現金化)に向けた手続きを進めている。
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