「双子の赤字」は米国の構造的問題によると指摘されてきたが、当事者の米国はこれを過度に心配はしない。米国が「基軸通貨国」であるためだ。米国が貿易収支で赤字になってこそ、全世界にその分ドルが供給される。米国の貿易収支の赤字が充分でなければ、全世界は「ドルの干ばつ」に直面することになる。一方米国は国債を発行したりドルを刷って、不足な財源を補填してきた。そのように開放された国債とドルは、他の国々の外貨保有額として吸収される。しかし基軸通貨国ではない場合、双子の赤字は持続可能ではない。
最近、韓国経済に「双子の赤字現象」が現れ始めた。財政赤字はムン・ジェイン(文在寅)前政府当時の放漫なバラマキ式の政府支出増加により、すでに構造化された。国家負債は2022年に1000兆ウォン(約104兆円)を突破した。しかし貿易赤字は初めての事態であるため、問題は深刻である。
9月1日基準でことしの貿易赤字額は94億7000万ドル(約1兆3542億円)で、貿易収支の統計開始以降、66年ぶりの最大値である。ウクライナ戦争による原油・ガス・食糧などの輸入増加は避けられないが、一時的な可能性がある。しかし、ドル対比のウォン通貨価値下落によるウォン表示輸入価格の引き上げは、貿易赤字の構造的要因である。ウォン高への転換は容易ではない。
また、主力商品の半導体輸出が26か月ぶりに減少したのは衝撃的だ。半導体の輸出は、昨年の8月対比で7.8%減少した。これまで不動の輸出比率1位を占める最大交易国の中国に対する輸出も、4か月連続で減少している。
対中貿易赤字の拡大は、中国政府の封鎖措置長期化による単純な問題ではない。2010年代の中頃、技術競争力の日米と価格競争力の中国の間で、韓国は「サンドイッチのように挟まれている」と認識されてきた。しかし2020年代に入り、そのような様相は変化している。
韓国科学技術評価院の分析によると、中国との「半導体の工程・設計技術」の格差は2010年の「4年」から2020年の「0.5年」に縮まっている。いまや中国は、韓国との垂直的分業関係を終え、水平的経済時代を進んでいる。これは、これまで韓国から中国が輸入していた中間材のほとんどを自国で直接生産し、反対に韓国が中国製中間材を輸入する割合が大きくなっていることからも知ることができる。
中国との超格差戦略の維持が「カギ」である。そのようにできなければ、対中貿易収支の赤字は構造化するおそれがある。これまで当たり前とされてきた対中貿易黒字が赤字へと反転すれば、韓国の貿易収支も赤字に転じるしかない。
韓国経済の双子の赤字は、いったんはまり込んでしまえば抜け出すのが難しい「落とし穴」である。財政赤字から抜け出そうとすれば、財政規律を確立し不要不急の支出を減らし、惰性化した「国家への依存」を払拭しなければならない。貿易収支の赤字が構造化しないようにするためには、産業生産性を高めなければならない。労働に傾倒した政策を正さなければならず、規制革新は当然しなければならない。
中国による国家主導の技術的台頭に対応しようとすれば、技術主権の確保のための官民コントロールタワーを立て、民間主導の国家革新体系を築かなければならない。
韓国ミョンジ(明知)大学のチョ・ドングン経済学科名誉教授
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