問題視されている発言は尹氏がバイデン氏との歓談を終え、会場を去る際に出たもので、カメラが捉えていた。しかし、音声は雑音も入っており明確ではない。大統領室は指摘されている尹氏の発言について「バイデン」の部分は「ナルリミョン(韓国語で「吹っ飛ばしたら」の意)」と言っていると説明した。当時、尹氏は米ニューヨークで開かれたグローバルファンド増資会合に出席していた。大統領室は、尹氏の発言は米議会やバイデン氏に言及した言葉ではなく、会合でグローバルファンドに拠出すると米国に約束した1億ドル(144億円)を、韓国の野党が吹っ飛ばしたら赤っ恥をかくだろうとの趣旨の発言だったとしている。
韓国紙・朝鮮日報も音声分析の専門家に見解を尋ねた結果として、尹氏が「バイデン」と発言したとされる部分について断定できず、前後の文脈からも「バイデン」と解釈するには無理があることを伝えている。
会合は、韓国の放送局ではMBCとKTVが代表取材しており、問題視されている発言の場面はMBCが字幕付き(「くそ野郎」の部分は放送禁止用語のため「××」と表示した)で最初に報じた。インターネット上などでもこの場面の映像が拡散したほか、日本や米国のメディアも報じた。映像が広がるや野党「共に民主党」は「国の品格が崩れた」「外交惨事」などと批判を強めた。
大統領室のイ・ジェミョン(李宰明)副報道官は26日の定例会見で、尹氏の発言問題について「虚偽報道」と改めて否定した。尹氏も同日、記者団に「事実と異なる報道で米韓同盟を傷つけることは国民を危険に陥れること」と述べた。また、与党「国民の力」のチュ・ホヨン院内代表は、最初に報じたMBCに批判の矛先を向けた。チュ氏は「MBCの最初の報道のように米国を指す言葉だったら韓米関係に影響を与える可能性があるだけに、より徹底した確認が必要だが、MBCはそうした確認過程を省略し、恣意(しい)的に刺激的な字幕を被せて報じた」と非難した。一方、MBCは「最大限配慮して動画を上げ、発言内容をそのまま伝えた」としている。
しかし、MBCの今回の報道に関しては、メディアからも批判が出ている。韓国紙の朝鮮日報は27日付の社説で、「MBCは尹大統領の発言内容を大統領室に確認していない。慎重に報道してほしいとの要請も無視した」と指摘した。その上で、「誰が何を根拠に、よく聞こえない言葉にあのような字幕を付けて報道したのか理由を説明しなければならない」とし、「一般の人々には聞こえない言葉を明確に聞いたと報道したのだから、その経緯を説明しろと言っているのだ」と求めた。
だが、与党内からも「尹大統領の発言が歪曲(わいきょく)されたというのなら、なぜすぐに訂正せずに対応が後手に回っているのか」と大統領室の対応の遅れを批判する声が上がっている。朝鮮日報によると、問題の発言の動画は22日午前9時ごろからネット上で急速に広がり始めたが、大統領室の正式な見解の表明はそれから13時間後だったという。
尹氏は「(事実と異なる報道が出た)真相などをはっきりさせる必要がある」と究明を求めている。また、「国民の力」の所属のソウル市議の一人は26日、MBCの社長、編集担当者、当該ニュースに関わった記者らを相手取り、名誉棄損と偽計業務妨害で告発した。
米国政府は今回の騒動について特に問題視していないが、米韓関係に影響を与えかねない問題なだけに、映像の確かな検証が必要と言えそうだ。
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