「佐渡島の金山」は、「相川鶴子金銀山」と「西三川砂金山」の2つの鉱山遺跡で構成。新潟県などは「江戸時代にヨーロッパとは異なる伝統的手工業で大規模な金生産システムを発展させた、世界的にもまれな鉱山だ」として、世界文化遺産の登録を目指している。
佐渡金山には戦時中、労働力不足を補うため、少なくとも1000人を超える朝鮮半島出身労働者が動員されたとされる。韓国は旧朝鮮半島出身労働者が強制的に労働を強いられていたと主張しており、こうした歴史的背景から「佐渡島の金山」が世界遺産登録を目指すことに反対を続けてきた。韓国政府は「佐渡島の金山」の世界文化遺産登録を目指す日本の動きに対応するため、官民合同のタスクフォース(作業部会)も立ち上げた。
また、韓国は2015年に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」についても、登録時、強い反発を見せた。「明治日本の産業革命遺産」に含まれている長崎市の端島炭坑(軍艦島)には、朝鮮半島出身労働者が多数働いていた。このことから韓国側は、世界遺産登録の際、日本側に朝鮮半島出身者の当時の状況が理解できるような説明を講じるよう要請。日本はこれに応じる形で一昨年、東京に「産業遺産情報センター」を開設した。しかし、韓国側は「(センターの)展示は強制労働させられた朝鮮半島出身者の被害が明確に説明されておらず、登録時の約束が守られていない」などと批判を強めた。
これを受けユネスコは昨年7月、戦時徴用された朝鮮半島出身者に関する日本政府の説明は不十分だとする決議案を採択。ユネスコの世界遺産委員会は日本側にセンターの展示を念頭に改善を求め、今年12月1日までに進捗(しんちょく)状況を報告するよう求めている。
韓国側は「明治日本の産業革命遺産」に関する問題が解決されていない中で、同じく朝鮮半島出身労働者が働いた歴史がある佐渡金山が世界遺産登録を目指すことをこれまで問題視してきた。
しかし、日本政府は今年2月、「佐渡島の金山」について世界文化遺産候補としてユネスコに推薦することを正式決定した。2023年の登録に期待が高まったが、ユネスコは提出された推薦書の不備を指摘。政府は7月、目標としていた2023年の登録実現は難しくなったと発表した。ユネスコが問題視したのは、砂金を採取するための「導水路」の扱いだった。文科省は現在は途切れている個所も一体として構成資産の一部と説明してきたため、ユネスコ側は「地理的に途切れている部分の記載が不十分だ」と指摘した。
書類の不備で2023年の登録の可能性がなくなったことに、当時、自民党や関係者からは批判が相次いだ。また、文化庁がユネスコから2月に不備を指摘されていたのにも関わらず、約5か月間も新潟県や佐渡市に説明していなかったことも問題視された。
政府は2024年以降の登録に向け、不備を指摘された砂金を採取する導水路の記述など、推薦書を修正。29日、暫定版推薦書をユネスコに提出した。永岡文科相は推薦書を提出したことを明らかにした上で「登録実現に向け、全力で取り組んでいく」と述べた。前回は暫定版を提出しなかったため、不備を指摘されても修正できなかった。この反省点を生かし、今回は暫定版をまず提出し、不備の指摘があった場合は、修正点を反映させた上で正式版を再提出する方針。
日本政府が暫定版の推薦書をユネスコに提出したことについて、韓国外交部(外務省に相当)の当局者は「韓国は現在、世界遺産委員国ではないため、情報を持ち合わせていない」とした上で、「日本に対しては佐渡島の金山の登録をする前に、2015年に軍艦島が登録された際にした約束の履行が先だという点を繰り返し強調している」とこれまでの立場を改めて強調した。
世界文化遺産は21か国の委員国からなる世界遺産員会が決定する。規定上は委員国の3分の2以上の賛成があれば登録となるが、全会一致で決定するのが通例となっている。韓国は2023年の世界遺産委員会の委員国に立候補する考えで、選挙は来年11月に行われる。「佐渡島の金山」の登録の可能性が2024年以降となったことから、韓国が世界遺産委員会の委員国になればこれまで以上に登録に影響を与える可能性もある。
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