李氏は昨年6月、国会議員経験がないまま36歳の若さで同党代表に就任し、話題を集めた。米ハーバード大でコンピューター科学と経済学を学び、卒業後はIT(情報技術)系のベンチャー企業を立ち上げた。2011年にパク・クネ(朴槿恵)元大統領から「国民の力」の前身、ハンナラ党の非常対策委員会委員に抜てきされ政界入りするも、2016年の総選挙、2018年の国会議員補選、一昨年の総選挙でいずれも落選。議員経験がないまま昨年の党代表選で勝利し、韓国の主要政党では初となる30代の党代表となった。
党代表就任直後から「われわれは大統領選で勝利する」と宣言。大統領選当時、同党公認候補だったユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は「李俊錫氏に選挙運動の全権を委ねたい」「30代の党代表と共に大統領選挙を戦うことになったことは候補として大きな幸運だ」と述べるなど、李代表に信頼を寄せた。
選挙の遊説で、両者は記者団の前にそろいの赤いパーカーで登場したこともあった。尹氏は「李代表が企画したものを全面的に受け入れ、この服を着て走れと言われれば走り、どこかへ行けと言われれば行くだけ」と李氏と一心同体であることをアピールしていた。
しかし、昨年12月、選挙対策委員長を辞任。尹氏の側近らと対立したことが原因だった。李氏は「選対委の構成員が選対委員長の指示に従わないということは、選対委の存在を否定すること」とし、「私は全ての選対委の職責から降りる」として選対委員長を辞任したが、党の代表職にはとどまった。
尹氏が大統領選に勝利し、李氏は37歳の若さで政権与党の代表となった。しかし、これに先立ち、ユーチューブチャンネル「カロセロ研究所」などは昨年12月、李氏をめぐって2013年にIT企業の代表から性接待を受けた疑惑があると主張した。さらに、李氏が当時の側近を通じて、この性接待疑惑に絡む証拠の隠滅を図った疑いも浮上した。
李氏はいずれの疑惑も否定したが、「国民の力」の倫理委員会は今年7月、李氏に党員資格停止6か月の懲戒処分を下した。
一方、韓国警察は先月、李氏の性接待疑惑に絡み、特定犯罪加重処罰法上のあっせん収賄罪の公訴時効(7年)が成立しているとして、検察に送致しない方針を明らかにした。当時の側近を通じて疑惑に絡む証拠隠滅を図った疑いについては捜査が続いている。
こうした中、「国民の力」の中央倫理委員会は今月7日、李氏に対する党員資格停止1年の懲戒処分を決定した。尹氏を「羊頭狗肉」「新軍部」などと非難したことが懲戒審議の対象となっていた。既に下されている6か月の停止処分と合わせると1年6か月となり、来年6月までの任期の党代表職を事実上、失うこととなった。
また、2024年4月に実施される総選挙に党の公認を受けて出馬することも、事実上、不可能となった。党の規定上、党の公認を受けて総選挙に出馬するためには、公認申請する時点で、1年間で3か月以上党費を納めた党員(責任党員)である必要がある。李氏が党員資格を回復するのは2024年1月9日で、総選挙は同年4月10日に実施される。党規定では、選挙日の選挙日の45日までに候補者選びを終えることを原則とすると定められており、李氏が公認申請を行うまでに責任党員の資格を得るのは事実上、不可能だ。ただ、聯合ニュースによると、同党の公薦管理委員会の要請と最高委員会の議決を通じて公認申請の資格を与えることができるという例外条項があり、李氏が公認を受ける可能性が完全になくなったわけではないという。
また、聯合ニュースは「李氏に対する追加処分が決まった背景には、尹氏の意向があったのではないかと党内外でささやかれている」と伝えている。大統領選挙中に生じた尹氏の側近と李氏の対立が尾を引いているとの見立てだ。かつて尹氏と李氏はまさに一心同体だった。
「李俊錫氏に選挙運動の全権を委ねたい」「30代の党代表と共に大統領選挙を戦うことになったことは候補として大きな幸運だ」などといった尹氏のかつての発言は、今となってはむなしく感じられる。
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