<W解説>不振にあえぐ韓国の半導体産業(画像提供:wowkorea)
<W解説>不振にあえぐ韓国の半導体産業(画像提供:wowkorea)
韓国サムスン電子の今年7~9月期の連結営業利益が、前年同期比32%減の10兆8000億ウォン(約1兆1100億円)となり、新型コロナウイルス禍以降、初の営業減益となった。このことは韓国の主力産業である半導体産業の不振と捉えられ、韓国で衝撃を持って受け止められており、韓国メディアは「韓国経済の支えである半導体産業が危機を迎えている」(中央日報)などと伝えている。

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 サムスン電子の半導体部門は同社の営業利益の70%を占める。しかし、7~9月期は同部門が力を発揮できなかった。主力のメモリー半導体の需要減少と価格下落が予想よりも深刻だった。事業部門別の詳細は明らかになっていないが、証券業界では7~9月期の半導体部門の営業利益は6~7兆ウォンとみている。これは4~6月期(9兆9800億ウォン)と比べると30%減となる額だ。ユジン投資証券のイ・スンウ研究員は、ハンギョレ新聞の取材に、「コロナ特需で好況を享受した半導体の需要鈍化が本格化し、メモリーチップの注文が急減し、中国のコロナ封鎖などに備えて備蓄しておいた在庫が二重の負担になっている」と分析した。

 コロナ禍で2020年は在宅勤務やオンライン教育が浸透し、それに伴ってパソコンやタブレット端末の販売が伸びた。しかし、コロナ特需が一服したことで、在庫増によって部品市況にも影響が拡大。データの一時保存に使う「DRAM」の価格は7~9月に前年比3割超も値を下げた。「DRAM」はサムスンが4割ほどのシェアを握っている。

 一方、台湾のファウンドリー(半導体受託生産)企業のTSMCは7日、7~9月期の売上高が前年同期比48%増の6131億4300万台湾元(約2兆8100億円)だったと発表。米インテル、サムスン電子を抜き、四半期業績で売上高が初めてトップとなる見通しとなった。世界の半導体市場の王座はこれまで、サムスン電子とインテルによる争いだった。サムスン電子はメモリー、インテルはシステム半導体分野でトップだ。インテルは1992年から売上高ベースで首位を守り、サムスン電子は2017年のメモリーの好況を追い風にして首位に立った。サムスンは2018年にその座を譲ったが昨年、再び首位を奪還した。両社の牙城を崩す勢いで急成長するTSMCの動きについて、韓国科学技術院(KAIST)のキム・ジョンホ教授は、朝鮮日報の取材に「TSMCの成長が予想をはるかに上回っている。世界半導体市場の中心軸が、メモリーからファウンドリーへと急激に変化していることを示している」と指摘した。

 電気自動車(EV)や自動運転車、モノのインターネット(IoT)、AI(人工知能)などの先端技術分野で必要とされるシステム半導体を生産するファウンドリー産業は、好況と不況を周期的に繰り返すメモリー半導体とは異なり、今後も成長が続くと予想されている。米国の調査会社ICインサイツは、世界のファウンドリー市場規模は2020年の873億ドル(約12兆7000億円)から2025年には1512億ドルに達すると予想している。

 また、中国の追撃も無視できない。最近、米アップル社はスマートフォンなどに使用するメモリー半導体の新たなサプライヤーに中国のYMTCを指定し、衝撃が走った。また、中国最大のファウンドリー、SMICが最近、7ナノメートルプロセスの製造技術を用いた半導体の開発に成功したとも報じられた。

 一方、大韓商工会議所が韓国の半導体専門家30人を対象に、現在の半導体産業の現状について尋ねたところ、77%が「危機」、20%が「危機直前」と回答した。「危機ではない」との回答はわずか3.3%だった。さらに97%が「危機は来年も続く」との見通しを示した。

 ユン・ソギョル(尹錫悦)政権は「半導体競争力強化特別委員会」を立ち上げ、各種支援策を含む法律の改正案を提出したが、国会での審議は進んでいない。中央日報は10日付の社説で、「米国議会が7月に半導体産業育成法を通過させたように、我が国も国会で半導体特別法の処理を急がなければならない。世界各国が主力産業の育成に全力を傾けているのに、韓国の国会だけがもたついていてはならない」と指摘した。

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