<W解説>糖度が基準に満たないシャインマスカット、韓国でブランド価値を下げられては…(画像提供:wowkorea)
<W解説>糖度が基準に満たないシャインマスカット、韓国でブランド価値を下げられては…(画像提供:wowkorea)
韓国紙の中央日報は今月14日、高級ブドウ「シャインマスカット」の価格が韓国で急落していると報じた。味も以前ほどには及ばないとの評価も出ているという。この記事は同紙の日本語版ニュースサイトにも掲載されている。もしこの記事を日本のブドウ農家が目にしたら、いたたまれない気持ちになるに違いない。

 シャインマスカットは、日本の農林水産省が所管する農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が30年以上かけて開発した。平均糖度18度前後の甘さが特徴で、種がなく、皮ごと食べることができる。1房1万円以上の値が付く物もある高級品種だ。農研機構は2006年に日本で品種登録した。

 そのシャインマスカットは、今や韓国でも盛んに栽培されている。なぜ日本は韓国に栽培を許してしまったのか。その要因の一つは「品種登録」にある。日本の農研機構は、シャインマスカットを、日本国内では2006年に品種登録をしたものの海外での登録は行わなかった。当時、シャインマスカットの輸出を想定していなかったことがその理由という。

 海外での果物の品種登録は、「植物の新品種の保護に関する国際条約」により、国内での登録から6年以内に行うよう定められている。結局、日本はこの期限内に韓国で品種登録をすることなく、韓国は期限が過ぎたため合法にシャインマスカットを栽培することが可能になった。

 シャインマスカットが開発された当時の日本の種苗法に穴があったことも流出を許した一因だ。シャインマスカットの種子が韓国に持ち込まれたのは2006年のこと。当時の種苗法は、苗木や種子を国外へ持ち出すことを禁じていなかった。

 苗が韓国に流出するや、農家たちは一獲千金を狙ってシャインマスカットの栽培を始めた。かつて、韓国メディアの取材に「地域農家の80%がシャインマスカットの栽培に変えた」と証言する農業従事者もいたほど、シャインマスカットは「ドル箱農産物」だった。

 韓国産シャインマスカットは国内にとどまらずベトナムや中国、米国などにも輸出され、日本はこれを苦々しく見るほかなかったが、苦い経験から、昨年4月、改正種苗法を施行した。改正法は、登録品種のうち権利者が制限をかけたものについては、国外へ持ち出す行為を禁じている。違反した場合、個人には10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、法人の場合、3億円以下の罰金が科され、流通の差し止めや損害賠償を請求される。農林水産省は改正法施行に伴い、持ち出し禁止の対象となる1975品種を示し、この中にはシャインマスカットも含まれている。

 韓国で「ドル箱」の役割を果たしたシャインマスカットだが、最近、状況が変わってきているという。中央日報が、シャインマスカットの栽培が盛んな南東部の慶尚北道(キョンサンプクド)・キムチョン(金泉)市アポウプのブドウ畑を取材し、栽培者の話として伝えたところによると、最近、シャインマスカットの需要が大幅に減り、味も以前より落ちたとの指摘が出ている。韓国の他の地域や中国、ベトナムといった海外でも栽培が行われるようになり、希少価値が薄れ、価格も下落傾向という。

 金泉市農業技術センターの関係者は同紙の取材に「今年は例年よりチュソク(お盆)が早く、祝日の節目を狙った一部農家が糖度の基準に達していないシャインマスカットを早期に出荷したりもした。シャインマスカットが甘くないとの声が上がる理由はこのため」と話した。

 韓国では栽培が始まった当初1房5万ウォン(約5000円)だったシャインマスカットの値段が今や5000ウォン(約500円)と10分の1にまで下がっている。これだけ下落すれば、韓国の栽培農家の意欲も下がり、さらなる品質低下を招くのではと懸念される。

 だが、糖度の基準に達してないシャインマスカットを出荷するなどして、シャインマスカットのブランド価値そのものを下げられては、日本の栽培者は納得できないだろう。金泉市のブドウ輸出流通センターのセンター長は中央日報の取材に「金泉で栽培のシャインマスカットが、名実ともに国内外最高のシャインマスカットの主産地となるためには、最高の味と品質で勝負するしかない」と語った。この言葉が金泉地域の農家の共通した思いであることを願いたい。

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