<W解説>米ニューヨークのタイムズスクエアの電光掲示板にキムチの広告=韓国の食品メーカー「大象」の戦略(画像提供:wowkorea)
<W解説>米ニューヨークのタイムズスクエアの電光掲示板にキムチの広告=韓国の食品メーカー「大象」の戦略(画像提供:wowkorea)
韓国の大手食品メーカーのテサン(大象)が、米ニューヨークの繁華街、タイムズスクエアの電光掲示板にキムチの広告映像の上映を始めた。来月6日まで計6720回広告を流すという。韓国紙のハンギョレ新聞は「大象は米国を『グローバル化』の前哨基地とし、現地でキムチの生産と広告キャンペーンを続けていく計画だ」と伝えた。

 大象は韓国を代表する総合食品メーカーの一社で、韓国のキムチ業界では最大手。創業当時の社名は東亜化成工業で1956年に故イム・デホン(林大洪)氏が創業した。林氏は調味料の製造工法を学ぶため日本に渡り、南部のプサン(釜山)に戻って韓国初の調味料工場を建てて同社を創業した。創業元年に発売した韓国初の調味料「ミウォン(味元)」は飛ぶように売れ、「1世帯1ミウォン」との言葉が生まれるほど大ヒットした。

 その後、1963年に財閥サムスングループの第一製糖(現CJ製糖)が「ミプン」を発売して対抗し、熾烈(しれつ)なミウォン・ミプン競争が繰り広げられた。当時、両製品の間で展開された謝恩品セールは有名で、ミウォンにビーチボールとミウォン瓶を景品に付けたのに対し、ミプンは大根おろしとゴム手袋の「ミプン・キムジャンセット」で売り上げ拡大を図った。両社の競争は韓国の食品産業の発展につながった。

 東亜化成工業は1962年にミウォンに社名変更。発酵によるグルタミン酸生産技術を韓国で初めて開発するなど韓国バイオ産業の礎を築いた。また、林氏自ら製造設備の設計に加わり、アミノ酸や核酸などの製造技術を確立させた。その後1997年に現社名の大象となった。

 創業者の林氏は2016年4月に96歳で死去した。「ミウォンの父」として韓国の食生活の向上や食品産業の発展に貢献した生前の功績は多大で、韓国食品産業の歴史に深く刻まれている。

 大象はキムチのグローバル化に力を入れており、今年3月には韓国の食品メーカーとして初めて、米国に大規模な工場を設立した。米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のシティ・オブ・インダストリーに建設した1万平方メートル(約3025坪)規模の工場でキムチを生産。ウォルマートやコストコなど、米国の大型スーパーには同社の「大象キムチ」が並ぶ。

 今回ニューヨークの繁華街、タイムズスクエアに広告を出したのもグローバル戦略の一環。テーマは「韓国のキムチ、今やみんなのためのキムチ(Korea’s Kimchi, Now For Everyone)」だ。外国人がキムチを味わう白黒のスローモーション映像の中で、キムチのみがカラーで表示され目を引く。味わった外国人たちは「シャキシャキとした」「豊かな味わい」「健康に良い」「新鮮」などと感想を語り、キムチをPRする内容となっている。

 米国ではキムチの需要が高まっており、韓国にとって米国は日本に次ぐ第2位のキムチ輸出国だ。消費層もこれまでの在米韓国人やアジア系人から現地人に拡大している。昨年の米国向けキムチの輸出額は2825万ドル(約34億5千万円)で、前年比22.5%増加した。

 また、今年2月に開かれた米ニューヨーク州議会では「キムチの日」の制定が決議された。「キムチの日(11月22日)」はもともと韓国で2020年に制定された記念日。キムチの優秀性の発信とキムチ文化の発展を目指すことを目的に定められた。11月22日を「キムチの日」に定めたのは11月にキムチの材料である白菜が旬を迎えることと、キムチに22種類の効能があるとされていることにちなむ。

 韓国は昨年、キムチの輸出額が8年ぶりに過去最高となったが、長年にわたり、値段が安い中国産キムチの物流攻勢を受けてきた。依然、韓国内では中国産キムチが席巻しているのが実情だ。韓国は韓国産に比べ価格が安い中国産キムチが世界の市場で存在感を高めることを恐れており、大象がグローバル戦略に力を入れているのは韓国を代表するキムチメーカーとして「キムチ宗主国・韓国」の巻き返しを図る狙いもある。

 大象のイム・ジョンベ社長は「今後も『韓国のキムチ』が『みんなのキムチ』として位置付けられるよう、様々なグローバル活動を展開していく」と話している。

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