尹氏が国会で施政方針演説をするのは、5月に続き2回目。尹氏は2023年度予算について、世界の複合的な危機と国民生活の課題に政府がどう対応するかを盛り込んだものだと説明した。尹氏は「政治的な目的が先立つこれまでの放漫な財政運用で財政収支の赤字が急速に拡大した」とムン・ジェイン(文在寅)前政権を批判した上で「経済成長と弱者福祉の持続可能な好循環に向け、国家財政が健全に支えることが大変重要だ」と強調。「来年の総支出は2020年以降、初めて前年比で縮小編成され、健全な財政に向けたターニングポイントとなるだろう」と明らかにした。
また、「世界的な物価高・高金利やドル高の中で金融市場の変動性が高まり、経済の不確実性が高まっている」とし、「社会的弱者の苦痛が徐々に大きくなっている」と述べた。その上で、社会的弱者への支援策として、低所得者や特殊形態の労働者らへの社会保険の拡大、障害者手当の引き上げなどを掲げた。また、「先端戦略産業と科学技術を育成し、中小・ベンチャー企業を支援することで新しい成長基盤を構築する」とし、「メモリー半導体の超格差維持とシステム半導体の競争力確保のために、専門の人材の育成や研究開発、インフラ構築などに1兆(約1000億円)以上を集中投資する」と明らかにした。
北朝鮮については「例のない頻度で弾道ミサイルをはじめ、脅威となる挑発を続けている。さらに核の先制使用を公に表明するだけでなく、7回目の核実験の準備も既に終えたものと判断される」と指摘した。日本との安保委協力の重要性にも言及し、「韓米防衛体制と韓米日安保協力を基に対北抑止力を強化する」と強調した。また、尹氏はこの日の演説でも5月の就任演説や、8月の光復節(日本による植民地支配からの解放記念日)でも表明した「大胆な構想」に言及した。「大胆な構想」は、北朝鮮に対し、核開発をやめれば食料を送ったり、韓国の支援で発電所や病院などを造ったりできるとする提案で、尹政権の非核化ロードマップとして位置づけられている。尹氏はこの日の演説で「北が非核化の決断を下し、対話の場に出てくるのなら、『大胆な構想』に基づく政治・経済的支援を惜しまない」と改めて強調した。
また尹氏は、「経済や安全保障の厳しい状況を乗り越えるには、与党と野党がバラバラではいけない」と指摘した。この日、最大野党の「共に民主党」は、施政方針演説が行われる本会議への出席を拒否した。韓国の検察は先週、違法な政治資金を受け取ったとして、「共に民主党」の李代表の側近を逮捕し、24日には党本部に家宅捜索に入った。「共に民主党」は、尹政権による野党弾圧だと反発を強めており、施政方針演説のボイコットを決めた。公共放送KBSは、野党が欠席する形で施政方針演説が行われるのは極めて異例と伝えている。
韓国国会は現在、定数300議席のうち「共に民主党」が169議席を占めている。与党「国民の力」のトップのチョン・ジンソク非常対策委員長は、「共に民主党」が施政方針演説が行われた本会議をボイコットしたことについて「多数の議席を持つ民主党が、立法権を党代表の犯罪を隠蔽(いんぺい)する手段に使っている。司法の政治化は議会民主主義の本領である対話と妥協を失わせるとともに、政争を巻き起こす方向に向かうだけ。実に残念だ」と批判した。また、大統領室の関係者は、聯合ニュースの取材に「来年の予算案を国民に報告する場に議員が参加しないという憲政史上初めての状況が発生した」とし、遺憾の意を示した。
与野党の対立が深まる中で混乱はしばらく続き、今後の国会運営にも影響が出るものとみられる。
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