<W解説>来月の海自の国際観艦式にようやく参加を決断した韓国政府=これまで外交か国民感情かで苦悩(画像提供:wowkorea)
<W解説>来月の海自の国際観艦式にようやく参加を決断した韓国政府=これまで外交か国民感情かで苦悩(画像提供:wowkorea)
韓国政府は来月6日に日本の海上自衛隊の創設70周年を記念して行われる国際観艦式に、韓国軍の艦艇を派遣することを決定した。韓国国防部(部は省に相当)が27日発表した。観艦式では、韓国側が「日本の帝国主義の象徴」として嫌悪感を持つ旭日旗が掲揚されることから、韓国政府内では参加に慎重な意見も出ていた。韓国メディアから「外交か国民感情か…」(イーデイリー)といった記事も出る中、韓国政府の判断が注目されていた。ユン・ソギョル(尹錫悦)政権の発足以降、日韓両国は自衛隊と韓国軍の交流再開を模索しており、熟慮の末、最終的に参加を決定した形だ。

 国際観艦式は、参加国の親善を目的に開催され、今年は20年ぶりに日本の主催で行われる。海上自衛隊の艦艇20隻のほか、米豪印など12か国の艦艇18隻が参加する予定。ただ、海自の観艦式自体は約3年おきに開いている。隊員の士気を高めることに加え、国際親善や防衛交流の促進、国民に自衛隊に対する理解を深めてもらうことを目的としている。前回2019年は台風の影響で中止となったため、今回は2015年以来の開催となる。今年は海自創設70年の記念の年に当たることから、国際観艦式として開催する。

 今年8月、日本政府は来月の国際観鑑式に韓国を招待していることを明らかにした。前回2019年の観艦式は、韓国海軍の艦艇が海自の哨戒機にレーダーを照射した事案によって、日本政府は韓国の招待を見送っていた。今回招待したことについて松野博一官房長官は8月、「日韓関係における現状を考えて総合的に判断した」と説明した。

 一方、招待を受けた韓国は出席の可否についてすぐさま回答せず、検討を重ねてきた。その理由は観艦式で旭日旗が掲揚されるからだ。日本の海上自衛隊旗が旭日旗であり、日本帝国主義の象徴と見る向きがある韓国では、「旭日旗騒動」がこれまで何度となく巻き起こってきた。旭日旗に反対する一部の韓国人たちは、旭日旗について「日本の侵略を受けた韓国などに歴史の傷を想起させる明白な政治的象徴」と主張している。

 昨夏に開かれた東京五輪を前にしては、2019年に韓国国会の文化体育観光委員会が、東京五輪の競技会場で旭日旗を持ち込んで応援することなどを禁じるよう、国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会に求める決議を採択した。この問題に対しIOCは同年、韓国政府から旭日旗の持ち込み禁止を求める書簡を受け取った際、「五輪で問題が生じた場合はケースバイケースで対応を検討する」と返答。韓国では事実上、旭日旗の使用が認められたものだとして反発した。大会組織委員会も「旭日旗のデザインは日本国内で広く使用されているものであり、それ自体が政治的主張や差別には当たらないことから、持ち込み禁止には該当しない」と主張した。その後、東京五輪は無観客での開催が決まり、当時この決定を報じる韓国メディアの記事の中には、「(競技場で)旭日旗を見ることがなくなったことも幸いだ」と論評する記事も見られた。

 旭日旗騒動は近年エスカレートしており、著名人が着ている服の柄や、企業の宣伝看板のデザインなど「旭日旗に似ている」という理由で一部の韓国人が問題提起することもあった。

 2018年10月に韓国南部・チェジュド(済州島)で開かれた国際観艦式では、韓国が日本に対し、海自の艦船に自衛艦旗である旭日旗を掲げないよう要請した。しかし、国連海洋法条約では「軍艦」に対し、所属を示す「外部標識」の掲揚を求めている。海自艦にとっては自衛艦旗の旭日旗が外部標識で、自衛隊法などは航海中、自衛艦旗を艦尾に掲げることを義務付けている。当時の自衛隊制服組トップの統合幕僚長は「海上自衛官にとって自衛艦旗は誇りだ。降ろして行く(参加する)ことは絶対にない」と述べた。日韓双方の主張に折り合いがつかず、結局、日本は海自艦艇の派遣を取りやめた。

 今回の国際観鑑式の参加可否を回答する期限は今月12日だったが、期限内に韓国から回答はなかった。海自トップの酒井良海上幕僚長は25日、「不参加の連絡があったわけではない。ぎりぎりまで待つ」と述べていた。韓国メディアが「海上自衛隊旗に対する国民感情を考慮して、韓国軍当局は観艦式への参加を簡単には決められない状況だ」(26日付、イーデイリー)などと伝える中、韓国政府は27日に開いた国家安全保障会議(NSC)常任委員会で観艦式への参加をようやく正式決定した。国防部は「北の挑発が相次ぐ中で、安全保障上の意味を最優先に考慮した」と説明している。

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