会談は、プノンペンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に合わせて設定された。両氏は約45分間会談し、日韓最大の懸案である元徴用工問題について、外交当局間の協議が加速していることを踏まえ、早期解決を図ることで一致した。
日韓首脳会談は、「戦後最悪」と言われるほどの両国の関係悪化を受けて、2019年12月に当時の安倍晋三首相とムン・ジェイン(文在寅)大統領が会談して以降、約3年にわたって開かれなかった。
韓国で政権が変わり、今年5月に大統領に就任した尹氏は日韓関係改善に意欲を見せ、早期の日韓首脳会談の実現を希望してきた。9月、両首脳はニューヨークで約30分間にわたり対話した。当時、両首脳は元徴用工問題などを念頭に懸案を解決し、日韓関係を健全に戻す必要性を共有した。しかし、日本政府は「元徴用工問題で進展がなければ首脳会談はしない」との立場からこの時の対話を「懇談」と位置付けた。一方、韓国メディアは「略式会談」との表現を使って報じた。韓国側が「略式会談」としている一方、日本側は「懇談」と発表した意図を当時、記者から問われた松野博一官房長官は「『会談』と『懇談』の違いに厳密な定義があるわけではないが、国連総会の機会に両首脳が短時間、課題を決めずに接点を持とうとしたもので、『懇談』としている。日本側で『懇談』や『立ち話』と称しているものは、韓国では『略式会談』と呼称していると承知しており、意味することは異なるわけではない」と説明した。また、韓国外交部(外務省に相当)の報道官は、「形式よりも首脳同士が会ったこと自体が重要だ」とした。
そして今回、約3年ぶりに正式な「会談」が実現した。読売新聞は「日本政府が今回、正式な会談に踏み切ったのは、北朝鮮が日本上空を通過した弾道ミサイルを含め、ミサイル発射を繰り返し、近く核実験に踏み切るとの見方がある中、日韓の結束を示す必要があると判断したとみられる」と伝えた。
会談では、先月、ソウルの繁華街イテウォン(梨泰院)で起きた雑踏事故に対して岸田首相から改めて弔意の意が伝えられた。これに対し、尹大統領からはこの事故で亡くなった日本人2人への弔意が示された。
元徴用工問題については、詳細なやり取りは明らかにされていないが、韓国大統領室は「外交当局間の間で活発な意思疎通が行われていることを評価し、早期解決のため引き続き協議していくことにした」と説明している。
元徴用工問題をめぐっては、2018年に韓国の大法院(最高裁)で日本企業に賠償を命じる判決が確定。韓国の裁判所で賠償に応じない日本企業の韓国内資産を差し押さえて売却する「現金化」の手続きが進んでいる。仮に現金化されれば日本政府は制裁措置を取る構えで、そうなれば日韓関係は破綻するとさえ言われている。そのため、現金化は絶対に避けなければならないという認識では日韓両政府とも一致している。韓国政府は現在、日本企業の賠償金を韓国の財団が肩代わりする案を軸に最終調整を進めている。
また、会談で両首脳は、前例のない頻度や様態で挑発行為を繰り返している北朝鮮について、日韓両国を含む地域の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であり、国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦だと強く非難した。その上で、北朝鮮の完全な非核化に向け、日韓両国や日米韓3か国で緊密に連携していくことを確認した。
そのほか両首脳は中国の覇権主義的な動きを念頭に、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携も確認。岸田首相が「来春までに新たな計画を発表予定だ」と表明したのに対し、尹大統領も韓国独自のインド太平洋戦略を説明。両首脳は双方の構想を歓迎する意向を示した。
約3年ぶりに正式に開かれた日韓首脳会談。今後、関係改善へとつながっていくのだろうか。日韓双方のメディアは、今回の会談を経ても徴用工問題の解決策など具体的な事柄については示されていないと指摘。両首脳ともそれぞれ低支持率に悩まされており、日韓双方で立場が真っ向から対立している徴用工問題は、やり方を誤れば国民感情を逆なでしかねず、自らの首を絞めつけることにもなりかねない。韓国紙のハンギョレ新聞は「このような状況で、岸田首相が韓日関係改善についてどれほど指導力を発揮できるかについては、日本国内でも懐疑的な見方が強い」と伝えている。
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