両社の合併をめぐっては、アシアナ航空が2015年12月期に負債が8.4兆ウォン円（現レートで約8857億2000万円）に達するなど経営が悪化。2018年に本社ビルを売却するも資金繰りに苦しむようになり、韓国財閥の錦湖アシアナグループは2019年4月にアシアナ航空の売却を発表した。2019年末に現代財閥系列のHDC現代産業開発と未来アセット大宇のコンソーシアムがアシアナ航空を買収することになったが、新型コロナウイルスの感染拡大で、買収契約を結んだ当時と状況が大きく変わり、2020年9月、HDCはアシアナ航空の買収を白紙とした。これを受け、アシアナ航空の債権団を取りまとめる政府系の韓国産業銀行が、大韓航空を売却先に決めた。
大韓航空はジンエアーというLCCを持ち、アシアナ航空はエアソウルとエアプサンというLCCを傘下に持っているが、これらも統合する計画。大韓航空とアシアナ航空とLCC3社を合わせた韓国内シェアは68%に達する。両社は合併完了後にアシアナブランドを廃止し、大韓航空ブランドの「Korean Air」に一本化し、運航機材や販売組織の効率化を進める。
各国で独禁法当局の審査が進められており、大韓航空は計14か国の競争当局にアシアナ航空との統合承認を申請。韓国をはじめトルコ、台湾、ベトナムなど9か国からは既に承認を得ている。
こうした中、英国のCMAは14日、両社の合併審査を留保することを明らかにした。CMAは、ロンドンとソウルを結ぶ直行便を運航しているのは大韓航空とアシアナ航空だけとした上で「両社の合併はロンドンとソウルを往来する乗客に対し、割高な運賃とサービス品質の低下をもたらす恐れがある」と指摘した。韓国に入国した英国人は、新型コロナウイルスの感染拡大前の2019年は約14万人だったが、今年はこれまでのところ4万4000人余りと大幅に減った状況だ。しかし、ウィズコロナとなり、今後、航空需要の回復が予想される中、両社が合併することで巨大航空会社が誕生すれば、消費者の選択の幅が狭まることをCMA側は懸念している。CMAで大韓航空とアシアナ航空の合併審査業務を受け持っているコリン・ラフタリー専任理事は「大韓航空とアシアナ航空がわれわれの懸念を払しょくできなければ、より深い調査が進められることになるだろう」としている。
CMAは大韓航空に対し、独占・寡占の懸念を払しょくできる方策の提案書を21日までに提出するよう求めた。CMAは提案書を踏まえ、両社の合併を承認するか、さらに調査を追加するかを28日までに決定する。大韓航空は「是正措置について英国当局と相談している。早急に内容を取りまとめて提案書を提出する予定」としている。
ある業界関係者は韓国紙のハンギョレ新聞の取材に「英国の立場としては、無条件で合併を承認する理由はない。英国のヴァージンアトランティック航空がロンドン-仁川路線を運航するという話がある。英国政府が（運輸権など）自国の利益のために支援に乗り出したのかもしれない」との見方を示した。
大韓航空がアシアナ航空との合併手続きを終えるためには、まだ結論を出していない英国、米国、EU、中国、日本の5か国から企業統合の承認を得なければならない。業界関係者はハンギョレ新聞の取材に「航空強国である米国とEUの決定が他の国家の審査にも影響を及ぼすだろう」と話した。
英国に続き、16日には米国が両社の合併について追加審査を進めることが明らかになった。航空業界によると、米法務省は両社の合併審査に関して「承認猶予」とし、両社の合併をさらに時間をかけて検討する方針を明らかにした。米路線はコロナ禍前の2019年に大韓航空の売り上げの29%を占めた主力路線だった。アシアナ航空も含め両社の米路線は多く、米当局は審査機関を延長し、合併後、市場競争性が制限されるか、独占の有無を慎重に判断する。
韓国国土交通部（部は省に相当）のウォン・ヒリョン長官は先月、「（両社の合併承認審査は）来年中に完了するだろう」との見方を示した。しかし、今後、米英のみならずEU（欧州連合）や日本、中国などの審査結果の発表を控えており、今回、米英が承認の可否の判断を先送りにしたことで両社の合併にブレーキがかかったとの見方も出ている。
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