尹氏は5月の大統領就任以来、歴代の韓国大統領として初めて、大統領室出勤時に「ぶら下がり取材」に応じてきた。日本では、首相などへの「ぶら下がり取材」は一般的だが、韓国ではこうした取材に大統領が応じるようになったのは尹氏が初めて。就任当初、大統領室の関係者は聯合ニュースの取材に、ぶら下がり取材について、「新政権の脱権威と意思疎通努力の象徴」として「やめる理由がない」と話していた。
しかし、今月、尹氏が東南アジアを歴訪する際、メディアとのあつれきが鮮明になった。大統領室はMBCが偏向報道を繰り返しているとして、尹氏の東南アジア歴訪の際、同社記者の大統領専用機の搭乗を認めなかった。MBCをめぐっては、尹氏が9月に米ニューヨークで開かれた会合に出席し会場から立ち去る際、自身を取り囲む側近らに「くそ野郎らが議会で承認しなければバイデン(米大統領)はメンツ丸つぶれだな」と発言したと報じた。発言中の「くそ野郎」は米議員を指すと指摘され、韓国野党などは当時「国の品格が崩れた」などと尹氏を強く批判した。一方、大統領室は発言について、バイデン氏や米議会のことを言ったものではないと否定。尹氏の発言は米議会やバイデン氏に言及した言葉ではなく、会合でグローバルファンドに拠出すると米国に約束した1億ドル(144億円)を、韓国の野党が吹っ飛ばしたら赤っ恥をかくだろうとの趣旨の発言だったと釈明した。
会合は、韓国の放送局ではMBCとKTVが代表取材しており、問題視されている発言の場面はMBCが直後に字幕付き(「くそ野郎」の部分は放送禁止用語のため「××」と表示した)で最初に報じた。
この一件を理由に、大統領専用機へのMBC記者の搭乗を拒否した大統領室は「専用機への記者の同乗は、外交、安全保障に関する取材の便宜を図るために提供しているものだが、最近、MBCが外交関連でわい曲し、偏った報道を繰り返したことを考慮し、MBCには取材に便宜を提供しないことにした」とした。
18日のぶら下がり取材で、尹氏はMBCの記者の搭乗を拒否した理由について「(MBCの取材団が)悪意ある行動を見せたため」と説明すると、その場にいたMBC記者は「何が悪意だというのか」と声を荒げた。その後、この記者と大統領室の広報企画秘書官との間で激しい言い争いとなった。
20日、大統領室は「ぶら下がり取材」が行われる大統領室庁舎1階に突如、仕切りの幕を設置した。しかし、大統領室関係者は、幕の設置は18日の尹氏とMBC記者団とのやり取りとは直接関係ないとしている。大統領室は「今月2日に非公開で行われた外国代表団の接見の際、一部の記者が一方的に代表団を撮影した。この件をきっかけに検討されたものだ。1階の空間は完全オープンになっており、外交的にすべての状況が露出するのは望ましくないとの意見があり、仕切りを設置した」と説明している。
さらに21日、大統領室報道官室は「21日付でぶら下がり取材を中断することを決定した」と発表。この発表通り尹氏はこの日朝、大統領室に入る際、取材に応じることなく執務室に向かった。大統領室は「ぶら下がり取材」の中断理由について「最近発生した好ましくない事態に関し、根本的な再発防止策を講じずには続けることができないと判断した」と説明している。「好ましくない事態」とは18日のMBC記者と尹氏、大統領室秘書官との舌戦を意味することは明らかだ。
こうした事態を受けて、韓国記者協会は21日、声明を発表し抗議。直ちに「ぶら下がり取材」を再開するよう求めている。
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