<W解説>韓国・梨泰院転倒事故、遺族らが初めて記者会見=警察、政府を批判、責任の追及など求める(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国・梨泰院転倒事故、遺族らが初めて記者会見=警察、政府を批判、責任の追及など求める(画像提供:wowkorea)
先月29日に韓国・ソウルの繁華街、イテウォン(梨泰院)の転倒事故で犠牲になった人たちの遺族らが、22日、初めて記者会見を開いた。事故を防げなかったのは韓国政府などの対応に問題があったためとし、ユン・ソギョル(尹錫悦)政権を厳しく批判。政府の謝罪や責任の追及、再発防止などを求めた。

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 梨泰院は事故当時、ハロウィーン直前の週末ということもあり、大勢の人でごった返していた。かつて米軍の駐屯地があったことから外国の文化が集まりやすい場所だった。そのため、もともとハロウィーンやクリスマスの時期に多くのイベントが開かれる場所としても有名だ。当時、仮装をして梨泰院を訪れていた人も多かった。

 一方、梨泰院は路地裏など、狭い道が点在する場所でもあり、事故が起きた通りも幅3~4メートルほどの細い坂道だ。狭い通りに人があふれる中、一部の人が転倒したのをきっかけに、通りにいた人が次々と折り重なるように倒れる群衆雪崩が起きたとみられている。

 この事故で日本人2人を含む158人が死亡。高校生ら約300人死亡した2014年の旅客船セウォル号沈没事故以来の惨事となった。10代や20代の若者も多数犠牲となった。

 今年のハロウィーンは3年ぶりに行動制限がない中で迎えるということで、多くの人出が予想されていた。そのため、梨泰院があるソウル市ヨンサン(龍山)区は先月27日には緊急対策会議を開催。防疫推進班や行政支援班、苦情対応班と関連する11の部署長が出席し、部署別の自主計画推進事項などを点検した。パク・ヒヨン区長は「新型コロナウイルスの再拡大や麻薬犯罪・事故が懸念されるだけに、住民の安全確保に万全を期す」と述べていた。

 しかし、事故当時、現場周辺で警備を担当していた警察官はわずか30人ほどにとどまるなど、警備体制の甘さが指摘されている。また、事故発生の数時間前から「人が多すぎて圧死しそうだ」などといった通報が警察や消防などに多数寄せられていたにも関わらず、適切な対応を取らず、このことが事故を招いたとの批判もある。警察や行政には国民の厳しい目が向けられている。事故から1週間となった今月5日にはソウル中心部の街頭で市民団体主催の追悼集会が開かれ、数万人の参加者が政府の責任を追及した。

 そして22日、事故後初めて遺族らが記者会見し、30人余りの遺族が出席した。遺族の一人は「国を率いる方々が過ちを認めず、違うものを違うと言わないのが非常に残念だ」と批判。別の遺族は「悲劇の始まりは13万人の人波を管理できなかったこと。市民の安全より、(別の場所で行われていた)デモの管理に没入していた」と指摘した。

 また、遺族らは会見で政府に対し6点を求めた。具体的には、政府の誠意ある謝罪、聖域のない厳格かつ徹底的な責任究明、真相究明と責任究明への被害者の参加、被害者との意思疎通の保障と人道措置に対する積極的な支援、犠牲者の追悼のための積極的な措置、2次加害を防止するための立場表明と具体的な対策づくりだ。

 一方、聯合ニュースによると、大統領室は、遺族と負傷者への正当な補償に向け、特別法の制定を検討しているものとみられる。大統領室の関係者は聯合の取材に「事故責任の所在が明らかになれば、現行法にのっとり措置を取る必要があり、足りない部分に対しては特別法など必要な法令を設けて補完する方針だ」と話した。

 事故は現在、警察庁の特別捜査本部が捜査を進めており、警察庁や現場を管轄するヨンサン(龍山)警察署、龍山区役所などを強制捜査。今月17日には警察を統括する行政安全部(部は省に相当)やソウル市の関連部局など計22か所を家宅捜索した。

 聯合は「警察庁の特別捜査本部が近く事故の中間捜査結果を発表すれば、その内容次第で政府と与党を中心に賠償、補償に関する議論が進展する可能性がある」と伝えている。

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