元徴用工訴訟をめぐっては、大法院が2018年11月に三菱重工業に対し、原告への賠償を命じた。しかし、賠償問題に関し、日本としては1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、同社は履行を拒んだ。このため、原告側は2019年1月に韓国内にある同社の資産の差し押さえと売却(現金化)に向けた手続きに踏み切った。2019年3月、中部のテジョン(大田)地裁は同社の韓国内資産である商標権2件と特許権6件の差し押さえを決定した。同社側は差し押さえ命令を不服として即時抗告したが、同地裁がこれを棄却。同社は地裁の判断を不服として大法院に再抗告したが棄却された。
これに伴い、同地裁は昨年9月、原告2人が求めていた計約5億ウォン(約5200万円)相当の同社の商標権と特許権の売却命令を決定した。同社側はこれに対しても抗告したが、棄却され、今年4月、大法院に再抗告した。一方、大法院は再抗告についての判断を下していない。
仮に現金化されれば日本政府は制裁措置を取る構えで、そうなれば日韓関係は破綻するとさえ言われている。そのため、現金化は絶対に避けなければならないという認識では日韓両政府とも一致している。
今年5月に就任したユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は日韓関係改善に意欲を見せ、日韓最大の懸案である元徴用工問題の解決に向けても、これまで精力的にアクションを起こしてきた。7月に官民協議会を発足。外交部のチョ・ヒョンドン第1次官が主宰し、学者や法曹関係者、元外交官などのほか、当初は元徴用工訴訟の原告側の代理人らもメンバーに加わった。しかし、外交部が大法院(最高裁)に対し、徴用工問題の解決に向けた外交努力を説明する意見書を提出したことに原告側が猛反発。「被害者側との信頼関係を完全に失わせる行為だ」とし、協議会に今後参加しない考えを示した。そのため、3回目以降は原告側の関係者が全員不参加で進められ、9月に開かれた4回目が最後となった。当時、外交部は「非公開で出席者を制限する形の協議会はこれ以降開催されないが、4回目の協議会が意思疎通の終わりではない」と強調。原告側や専門家らを対象に、より広範囲な形で意見収集を続けつつ、韓国政府の解決案を作るための作業に集中すると強調した。
韓国政府は当初、問題解決のため、韓国政府の予算を使った代位弁済案を検討したが、原告が反対し実現は難しいと判断。他の方策を模索する中で、韓国の元徴用工を支援する財団が両国の企業などから寄付金を募り、賠償金を肩代わりする案が浮上。韓国政府は現在、これを最も有力な解決策として捉えているものとみられる。
韓国国会は現在、尹政権の対日政策を「弱腰外交」などと批判を強める最大野党「共に民主党」が議席多数を占めていることが問題解決を難しくしている側面もあるが、既存の財団を使ったこの方法ならば、新たな法整備が不要なため、国会審議で苦慮する心配はない。しかし、原告側は韓国の財団など第三者が間に入るとしても、日本企業の謝罪と寄付金の拠出への参加が必要だとの立場を示している一方、日本はこれに応じる姿勢を明確に示していないため、この溝を埋められるかがカギとなる。
外交部の当局者は先月29日、「韓日間で以前よりも、もう少し具体的な解決策について協議が行われている。前より絞られたのは事実」と明かした。ただ、具体的な内容については明らかにしなかった。
先月13日にはカンボジアの首都プノンペンで日韓首脳会談が行われた。会談が行われたのは2019年12月以来、約3年ぶりで、岸田文雄首相と尹錫悦大統領は元徴用工問題について、外交当局間の協議が加速していることを踏まえ、早期解決を図ることで一致した。また、先月24日には東京で局長級会議が開かれるなど、元徴用工問題をめぐって緊密な協議が続いている。
早期解決を目指す一方、外交部の当局者は聯合ニュースの取材に「原告側と日本側とも話さなければならず、(韓国の)国民がどのように受け入れるか世論を探る必要もあり、時間がかかっている。一部で解決策を年内に発表する可能性が指摘されているが、もう少し時間がかかりそうだ」と話した。
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