<W解説>韓国でトラック運転手らによるスト、物流に危機=スタンド行ってもガソリンがない(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国でトラック運転手らによるスト、物流に危機=スタンド行ってもガソリンがない(画像提供:wowkorea)
韓国でトラック運転手らによる全国的なストライキが続いており、既にガソリンが不足するなどの影響が出始めている。韓国政府は先月29日、労働者に業務復帰を強制できる「業務開始命令」を発令。しかし、運転手らは徹底抗戦の姿勢を見せている。ストが続けば、市民生活にさらなる影響が広がるほか、企業活動にも支障が出ることが懸念される。

 貨物輸送の個人事業者らで構成する労働組合「全国運送産業労働組合貨物連帯」(貨物連帯)は、適正な運賃の支払いを保証する「安全運賃制」の恒久化や適用範囲の拡大を求めて先月24日からストを展開している。安全運賃制は2020年に導入されたが、貨物連帯は6月に同制度の改定を求めてストを実施。政府は一部の要求を受け入れた。今回、さらなる要求を通すために再びストに踏み切った。

 貨物連帯の組合員は約2万5000人でトラック運転手全体の6%程度だが、コンテナトラックなどの特殊大型トラックの運転手約1万人が所属しているため、ストの影響は如実に表れた。集団での運送拒否が続いたことで、港湾など主な物流拠点で運送に支障が生じ、輸出入貨物の処理が滞る事態に。これを受け政府は28日、陸上貨物運送分野の危機警報レベルを「警戒」から最高段階の「深刻」へ引き上げた。

 さらに政府は30日までにセメント分野の運送拒否者に対し業務開始命令を出した。業務開始命令を受けた事業者が正当な理由なしに業務に復帰しなかった場合、運行停止や資格停止に加えて、3年以下の懲役または3000万ウォン(約310万円)以下の罰金が科される可能性がある。同命令が運送業者に対して下されるのは初めて。

 国土交通部(国土交通省に相当)は、セメント分野にまず業務開始命令を下したことについて、「これまで貨物連帯の集団運送拒否の長期化による被害状況などを綿密に検討し、産業界や海洋水産部(部は省に相当)、産業通商資源部などの関係省庁の意見を総合的に集約した結果、セメント分野の物流正常化が急がれると判断した」と説明した。

 チュ・ギョンホ経済副首相兼企画財政部長官は29日、閣議後の記者会見で「経済危機克服のために力を合わせなければならない時期にもかかわらず貨物連帯は自分たちの要求を通すために国民生活と経済を人質に物流を中断させ、産業基盤を揺るがしている」と批判。「業務に復帰しない場合、法と原則に基づき厳正に対処する」と強調した。

 ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は「セメント、鉄鋼などの物流が中断され、全国の建設と生産の現場がストップし、産業基盤が焦土化される状況」と説明。「手遅れになる前に職場に戻っていただきたい」と呼び掛け、「私は任期中に労使の法治主義を確立する。違法とは絶対妥協しない。違法行為の責任については最後まで厳正に問う。違法なストライキの悪循環を断ち切り、国民の負担を防ぎたい」と述べた。

 貨物連帯は業務開始命令を「戒厳令宣言」だとして直ちに反発。声明を発表し「政府の業務開始命令に屈せず、ストライキを継続する。今回の全面ストの結果がどうなろうと、貨物労働者が人間らしく暮らし、そばにいる家族や仲間の市民の安全を守るための行動は絶対にやめない」とした。また、法的対応に乗り出す考えも示した。

 貨物車の運行中断の影響を最も受けているのはセメント業界で、物流停滞によって国内のセメント生産量が9割超減少。各地で建設工事が中断を余儀なくされている。

 また、石油製品を運搬するタンクローリーの運転手もストに加わっているため、首都圏などではガソリンが品切れとなるガソリンスタンドが相次いでいる。在庫がないガソリンスタンドには軍のタンクローリーも動員され、供給作業が行われている。ストが長期化した場合、在庫不足が一層深刻化することが懸念される。

 一方、全国民主労働組合総連盟(民主労総)は、政府がセメント運送従事者に業務開始命令を下したことに反発し、6日に全国で同時多発的なゼネストを行うと予告した。民主労総は「組織の力量を総動員する」としている。

 ストが今後も拡大すれば、建設業や製造業を中心とした企業活動や、市民生活へのさらなる影響は避けられない見通しだ。

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