韓国は近年、宇宙開発に力を入れており、昨年には日本も参加する米国主導の有人月探査「アルテミス計画」に加わった。今年6月には韓国が独自開発した初の国産ロケット「ヌリ号」を打ち上げ、搭載した衛星を目標の軌道に乗せることに成功。「自力で衛星の打ち上げが可能な世界7番目の国になった」と歓喜に沸いた。
当時、尹氏は大統領室庁舎からテレビ電話で現地と結び「韓国の地から、宇宙へと進む道が開けた。韓国国民、そして韓国の若者たちの夢と希望が宇宙へと広がる」と喜びを表し、「30年に及ぶ至難の挑戦の産物」と関係者の努力をたたえた。
そして、今年8月には韓国初の月探査機となる軌道衛星「タヌリ」が、米フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられた。タヌリには、米航空宇宙局(NASA)が開発した月面を撮影する特殊カメラ「シャドーカム」と韓国で開発された5つの機器が搭載されている。5つの機器は高解像度カメラと変更カメラ、磁場測定器、ガンマ線分光計、宇宙インターネット機器。本体と搭載体を合わせた重量は678キロある。タヌリは韓国語で「月を楽しむ」という意味。
タヌリは現在、月に向かって移動中で、予定では12月16日に月周回軌道に乗せる。そして同月31日に目標とする月の上空100キロの軌道に入り、本体の機能テストなどを経て来年2月から12月まで任務を遂行する。具体的には月着陸候補地の探索と表面鉱物の分析、磁場・放射線観測、宇宙インターネット技術検証などを予定している。タヌリが12月に月に到着し、探査任務を始めれば、韓国は世界で7番目の月探査国になる。
韓国航空宇宙研究院は「韓国型ロケット高度化事業」を進めており、同事業には2027年までに総額6874億ウォン(約720億円)が投じられる見通しとなっている。米国の「スペースX」のような宇宙事業を育成することを目指している。
尹氏は28日にソウル市内で開かれた未来宇宙経済ロードマップ宣言式に出席し、「今後は宇宙に対するビジョンのある国が世界経済を主導し、人類が直面する問題を解決することができる」と述べた。尹氏は「宇宙強国」に飛躍するための2045年までの政策方向を提示。5年以内に月に向けて飛行できる独自のロケットエンジンを開発して2032年に月に着陸し、資源の採掘を開始するとした。その上で、▼月と火星の探査▼宇宙技術強国への飛躍▼宇宙産業の育成▼宇宙産業に携わる人材の養成▼宇宙安全保障の実現参加▼国際連携の主導といった6つの政策方向と支援策を示した。
また、科学技術情報通信部(部は省に相当)の傘下に専門家を中心に構成する宇宙航空庁を新設することを表明した。同庁の新設は尹氏の先の大統領選での公約でもある。同庁は、現在、国防部、科学技術情報通信部、防衛事業庁、韓国航空宇宙研究院など、各省庁に分かれている宇宙政策を統括する役割を担う。いわば、NASA(米航空宇宙局)の韓国版だ。
政府は特別法によって同庁を設立する方針で、来年の前半に法案を国会に提出し、特別法が成立すれば、関係法令を整備して、来年末までに同庁を発足させたい考えだ。
尹氏が「未来宇宙経済ロードマップ」を発表したことを受け、韓国紙の中央日報は29日付の社説で「韓国にもNASAが発足し、本格的な宇宙時代が開かれることになった」とした。同紙は「宇宙航空庁の設立は遅きに失したが、歓迎すべきこと」と評価した上で「人口5000万人に過ぎない韓国が宇宙探査だなんてと自嘲する声があるとしたら、それは世界の変化と発展の流れを読めていない」と指摘。「ニュー・スペース時代では地球軌道人工衛星を利用した多様なビジネスのほかにも、月基地建設や資源発掘、火星探査など、宇宙への人類の競争が激しくなっていく。この過程で数多くの未来の新技術があふれるだろう」と多様な可能性に期待した。
そして同紙は「韓国の宇宙航空庁も部署間の障壁を越え、民間が主導してニュー・スペース時代を後押しできる組織となることを期待する」とした。
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