1日に「(日本)政府が1日までにユネスコ世界遺産委員会に提出した保全状況報告書の内容が判明した」と最初に報じた産経新聞によると、報告書は英文で500ページ以上に及び、朝鮮人労働者の説明のほか、軍艦島の護岸整備や他の構成遺産の保全状況について報告されているという。また、同紙によると、報告書では朝鮮人労働者に関して、日本が戦時中、労働力不足に陥っていた状況を指摘した上で、「国家総動員法に基づく国民重用例は全ての日本国民に適用された」と指摘。韓国などで軍艦島をナチス・ドイツの収容所と同列視する主張があることに対しては「ナチスと比較するのは無理がある」とする海外識者の見解などを紹介し、否定しているという。
「明治日本の産業革命遺産」は、8県11市にまたがる23の構成遺産から成る。西洋から非西洋世界への技術移転と日本の伝統文化を融合させ、1850年代から1910年までに急速な発展を遂げた炭鉱や、鉄鋼業、造船業に関する文化遺産で、2015年に世界文化遺産に登録された。
しかし、韓国は登録時、23の施設の中に含まれる軍艦島では多くの朝鮮人が強制労働させられ犠牲になったと主張し、登録に反発した。これに対して日本は、「犠牲者を記憶にとどめる対応措置をとる」と表明し、2020年6月、東京に「明治日本の産業革命遺産」の全体像を紹介する産業遺産情報センターを開設した。だが、韓国側は「展示は強制労働させられた朝鮮半島出身者の被害が明確に説明されておらず、遺産登録時の約束が守られていない」などと批判した。
世界遺産員会は昨年7月、センターでの展示について、朝鮮半島出身者に関する説明が「不十分」とする決議案をまとめ、「遺憾」を表明した。決議案では意思に反して連行され、過酷な状況での労働を強いられた多数の朝鮮人たちについて理解できるような措置を講じるよう求めた。これに、日本政府は「わが国は政府が約束した措置を含めて誠実に履行してきた。こうした立場を踏まえ、適切に対応したい」とした。世界遺産委員会の決議案には戦時中に軍艦島で過ごした元島民らから反発が上がり、決議案が出された当時、産経新聞は「韓国側が朝鮮人に過酷な労働を強いたとして挙げている資料は、まやかしの資料ばかり」「到底受け入れられない。なぜユネスコは韓国の立場だけを忖度(そんたく)するのか」などと憤る元島民らの声を伝えている。
決議案を受け、日本政府は改善の進ちょく状況の報告を世界遺産委員会から求められ、1日までに報告書を提出した。報告書では、前述のように世界遺産委員会が決議案で「強い遺憾」を表明したことについても触れ、「真摯に受け止める」とした。その上で、出典が明らかになった資料や証言に基づき、引き続き軍艦島の歴史を次世代に継承していく考えを示した。
日本政府が提出した報告書では「徴用は全ての日本国民に適用された」と記し、当時、朝鮮人を同じ日本国民として扱ったことを強調したことから、韓国メディアは報告書について「ユネスコの警告にも日本、軍艦島『朝鮮人強制労働』を否定」(ハンギョレ新聞)などといった見出しの記事で伝えている。
近くユネスコはこの報告書を公開し、来年の世界遺産員会で審議する見通し。また、日本政府は報告書の趣旨に沿って来年3月末までに産業遺産情報センターの展示内容を変更することにしているが、今後、韓国政府からは報告書について反発が予想される。
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