<W解説>サッカーW杯、「韓国排除」を貫いてきた北朝鮮メディアが韓国戦を初めて放送した理由(画像提供:wowkorea)
<W解説>サッカーW杯、「韓国排除」を貫いてきた北朝鮮メディアが韓国戦を初めて放送した理由(画像提供:wowkorea)
北朝鮮メディアが7日夜、前日行われたFIFAワールドカップ2022決勝トーナメント1回戦の韓国対ブラジル戦を録画放送した。今大会で北朝鮮メディアは、先月の開幕以来、一部の試合は放送してきたが、韓国戦についてはこれまで一切報道せず、露骨な「韓国排除」を貫いてきた。しかし、大会が開幕して初めて朝鮮中央テレビが韓国戦を放送。韓国メディアは、韓国がこの試合で負けた上、敗退も決まったため放送されたものと分析している。

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 北朝鮮ではサッカーは人気競技で、普段からテレビでの試合放映も多い。今大会に北朝鮮代表チームは出場していないが、大会の試合を視聴したい住民は相当数いるとみられている。そのためFIFAは、今大会に際し、韓国の地上波放送局3局(SBS、KBS、MBC)から朝鮮半島での放映権を譲り受け、北朝鮮の住民が視聴できるようにした。ただ、生中継はなく、録画放送されている。

 朝鮮中央テレビは先月21日夜に、開会式の一部の模様と、その後に行われたカタール対エクアドルの試合でのゴールシーンを放映した。

 また、新聞も、朝鮮労働党の機関紙、労働新聞が22日、大会の開幕を伝え、その後の試合でエクアドルがカタールに2-0で勝利したことを報じた。国営の朝鮮中央通信も同様の内容で報じた。

 しかし、開会式では世界的な人気を誇る韓国の男性音楽グループ「BTS」(防弾少年団)のメンバー、ジョングクが大会の公式ソング「Dreamers」を熱唱したが、朝鮮中央通信は開幕式について報じる際、この点に言及しなかった。記事は「大会の主題歌が鳴り響く中、大会の公式シンボルが登場した」とだけ伝えた。

 その後も「韓国排除」は随所で見られた。朝鮮中央テレビは23日夜に1次リーグD組第1戦のフランス対オーストラリア戦の一部を録画で放送する際、観客席にかけられた各国の国旗のうち、韓国の国旗テグッキ(太極旗)を予めモザイク処理した。また、試合中に映るスタジアム内の広告のうち、韓国の自動車メーカー、現代自動車の広告で、同社の電気自動車「アイオニック5」と「アイオニック6」の文字を消去する編集が施された。同日夕に録画中継したグループリーグC組第1戦のサウジアラビア対アルゼンチン戦でも、中国の不動産大手「ワンダグループ」の広告はそのまま放映した一方、現代自動車の広告についてはやはり文字を消去した。

 朝鮮中央テレビはこれまでも、イングランド・プレミアリーグの試合をハイライトで放映する際、トッテナムに所属する韓国代表の主将ソン・フンミン(孫興民)選手が出場する試合はことごとくカットしてきた。

 これらの措置は、北朝鮮が敵対する韓国が国際的に存在感を示したりする内容を北朝鮮の住民に見せないようにするためとみられている。

 しかし、朝鮮中央テレビは7日夜、前日に行われた韓国対ブラジル戦を録画で放送した。放送中、韓国のフォーメーションを説明したほか、ソン選手を「主将」と紹介した。そのほかの選手についても試合中、これまでのキャリアなどを伝えた。この試合で韓国は前半に4失点するが、後半にペク・スンホ選手が1点を返した。韓国サポーターが最も歓喜したこの場面を、朝鮮中央テレビはハイライト映像という形で流した。この試合では編集もほぼなく、現代自動車の広告もそのままの形で映った。

 韓国にとって、今大会最後となった試合を放送した北朝鮮メディア。このことについて韓国の聯合ニュースは「朝鮮労働党宣伝扇動部が法曹の内容や形式まで指揮するため、北朝鮮指導部の意向が反映されたとみられるが、韓国が(この試合に敗れ)ベスト8進出を逃しており、韓国が負けた試合を放送しない理由はないと判断したようだ」と分析した。

 前述のように北朝鮮が韓国の試合の放送を避けるのは、韓国が国際的に存在感を示したりする場面を北朝鮮の住民に見せないようにする意図があるためとみられ、この試合のように「敗退」というマイナスイメージの試合は躊躇(ちゅうちょ)なく放送できるということのようだ。北朝鮮で生中継の韓国戦が見られるのはいつになるのだろうか。

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