<W解説>韓国の李明博元大統領、「28日午前0時の恩赦が有力」と韓国メディア=尹錫悦大統領の判断に注目(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国の李明博元大統領、「28日午前0時の恩赦が有力」と韓国メディア=尹錫悦大統領の判断に注目(画像提供:wowkorea)
韓国紙の朝鮮日報などは10日、「韓国大統領室と法務部(法務省に相当)が一部の政治家と財界人の赦免(日本の恩赦に相当)・復権を検討している」と報じた。同紙によると、イ・ミョンバク(李明博)元大統領(81)もこの検討対象に含まれているという。

 李氏は、2008年2月25日~2013年2月24日まで、第17代大統領を務めた。出身は大阪で、戦後、日本から引き上げた後、苦学して名門・コリョ(高麗)大学を卒業。当時、草創期にあった現代グループの現代建設に入社し、頭角を現して36歳の若さで社長に就任した。

 退職後に政治家に転身し、1992年から国会議員を務め、2002年からソウル市長を1期務めた。2008年に大統領に就任し、「経済大統領」として「韓国747計画」を推進。毎年平均7%の経済成長、1人あたり4万ドルの国民所得、そして韓国を世界7大経済大国にするという計画だ。

 しかし、在任中、米国産牛肉の全面的な輸入再開方針を決定したことが国民の猛反発を受け、支持率が一時は2割台に下落。連日、大規模な抗議デモが続き、韓国社会に混乱を招いた。また、リーマン・ショックによる世界同時不況とそれに伴う景気悪化、株価下落や急激なウォン安に苦慮するなど、期待された「経済大統領」としての手腕を十分に発揮できなかった。

 そして、任期も終盤に差し掛かった2012年8月、現役の大統領として初めて、韓国が領有権を主張する島根県の竹島(韓国名・独島)に上陸。島は韓国領だと改めて主張した。李氏はそれまで滞っていた日韓間のシャトル外交を復活させるなど、対日外交で成果も上げたが、竹島上陸以降、日韓関係は一気に冷え込んだ。

 その李氏は、財閥大手のサムスングループなどから巨額の賄賂を受け取り、会社の資金を横領したとして2018年3月に逮捕された。そして2020年10月、収賄や横領の罪で懲役17年、罰金130億ウォン(約12億5000万円)が確定。翌月に収監された。

 しかし、その後、持病が悪化して入退院を繰り返すようになり、スウォン(水原)地検は今年6月、李氏の健康状態の悪化を考慮し、3か月間の刑執行停止が決定。李氏は実刑判決を受けてから約1年7か月ぶりに釈放された。韓国の刑事訴訟法は、高齢だったり、刑の執行で健康を害す恐れがあったりする場合に、懲役刑の執行を停止できると定めている。

 昨年末には、パク・クネ(朴槿恵)元大統領が新年の特別赦免の対象となり、朴氏は昨年12月31日、釈放された。一方、李氏は対象から除外された。これに、李氏に近い関係者からは当時、「特別赦免するのなら、李明博、朴槿恵の2人ともすべきではないか。一人だけを赦免したというのは信じられない」などと疑問の声が上がった。

 両者で扱いが違ったことについて、当時、李氏の関係者からは「与党(当時)は『朴元大統領は政治犯として自身が得たものはないが、李元大統領は犯罪によって利益を得ており、罪質が異なる』と考えているのだと思う。(両者で)扱いを変えることで、李元大統領をさらに格下げして蔑視するという意図があるのだろう」との見方が示された。当時韓国は翌年に大統領選を控え、この赦免は国民統合を図るねらいもあったとされた。実際、当時の政府は朴氏を特別赦免の対象とした理由について「国民の統合のため」と説明した。

 李氏は前述のように、今年6月に刑が執行停止(3か月)となり釈放され、9月に執行停止が延長されている。与党「国民の力」の関係者は9日、朝鮮日報の取材に「ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は国民統合と経済活性化の観点から、年末あるいは年初に特別赦免を実施するだろう」とした上で、「李元大統領は高齢である上に、健康状態も良くないため、今回、赦免される可能性が高い」との見方を示した。李氏は今月28日午前0時に、延長されていた執行停止が終了する。その際に赦免される可能性が浮上している。

 だが、赦免の対象者を最終的に決定するのは大統領だ。尹大統領がどのような判断を下すのか注目される。

Copyrights(C)wowkorea.jp 3