韓国メディアによると、今月12日夜、梨泰院の事故に巻き込まれるも助かった男子高校生が行方不明になったと母親から警察に通報があり、その後、生徒はソウル市内の宿泊施設で死亡しているのが見つかった。警察は現場の状況から生徒が自殺したとみて調べている。
生徒は先月29日、梨泰院に友人と訪れていたところ、雑踏事故に巻き込まれた。自身は足を負傷したが、命は助かった。しかし、当時一緒にいた友人2人は死亡した。韓国メディアによると、事故後、生徒は校内での心理カウンセリングと、週2回、精神科に通院し治療を受けていた。ソウル市教育庁の関係者の説明では、生徒はカウンセリングを受けてから、状態は徐々に良くなっていたというが、自ら命を絶った。生徒の弔問に訪れた、遺族の知人の一人は、韓国紙・朝鮮日報の取材に「若い年齢で友を失い、一人生き残った精神的苦痛に耐えられなかったのだろう」と話した。
大韓精神健康医学科医師会は15日、「黄金のような大切な命、これ以上失われることがないように」と題する声明を発表した。「PTSDは自身や他人の死に対する脅威、深刻な傷害、精神的または身体的案年を脅かす事件を経験したり目撃したりしたときに生じることがある」とし、「事件・事故に対して恐怖を感じて、事件後も継続的な再経験を通じて苦痛を感じる。PTSDを経験する人たちは、事件・事故が終わっても終わっていないかのように感じてその場にとどまっている」と症状について説明。「トラウマを経験する際に『その時、そこにいなければよかったのに』という後悔は、憂鬱感を持続させる。どうにもできない偶然に対して非難する態度を通じて症状が悪化する場合がある。事故の報道が過度に扇情的だったり、捜査のためという名目で真相究明に不必要に細部事項までを話させたりすることも、2次加害につながり得る」と警鐘を鳴らした。
事故はハロウィーンを前にした週末でごった返す梨泰院の通りで起きた。現場は幅3~4メートルほどの狭い坂道で、一部の人が転倒した後、次々に折り重なるように倒れる群衆雪崩が起きたものとみられている。事故では日本人2人を含む158人が死亡した。犠牲者は10代、20代の若者が多い。高校生ら約300人が犠牲となった2014年の旅客船セウォル号沈没事故以来の惨事となった。
事故直後から、「テレビで見た事故現場の場面が思い出され、気分がすぐれない」「事故の写真を見て以降、眠れない」などとつらさを訴える声が上がった。
事故後、韓国紙の東亜日報は、事故当時、現場にいた高校1年生の声を伝えた。生徒は同紙の取材に「けがはないけれど、精神的なショックが大きすぎて学校に行って、ちゃんと生活できるかわからない」とつらい胸の内を明かした。ニュースやSNSを通じて事故を知った人からも「映像が忘れられない」「事故の写真を見た後から眠れない」と心的不調を訴える人が絶えない。
また、事故は狭い通りに人がひしめき合う中で起きたことから、通勤・帰宅ラッシュ時のソウルなどの地下鉄に恐怖を感じるという声も上がった。
事故後、キョンヒ(慶熙)大学精神健康医学科教授で、韓国トラウマ・ストレス学会のペク・ジョンウ会長は「愛する人を失った遺族が一時的なトラウマ被害者。現場にいた負傷者と目撃者、救助人員などまで含めれば、最大1万人までトラウマの心理治療が必要となる」と予測。「安全な環境で一緒に悲しむことができ、信じられる人々と一緒にいることができるようにしなければならない。政府レベルでの支援と議論が必要な状況」と訴えた。
男子高校生の自殺を受け、前出の医師会は「心のケアは症状が現在深刻な人を中心に行われるべきだが、余力があるなら高危険群に該当する負傷者や親しい人を失った人などにも、もう少し積極的かつ広範囲な支援が必要だ」と強調した。
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