タヌリは今年8月5日、米フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられた。タヌリには、米航空宇宙局(NASA)が開発した月面を撮影する特殊カメラ「シャドーカム」と韓国で開発された5つの機器が搭載されている。5つの機器は高解像度カメラと変更カメラ、磁場測定器、ガンマ線分光計、宇宙インターネット機器。本体と搭載体を合わせた重量は678キロある。タヌリは韓国語で「月を楽しむ」という意味。
打ち上げ成功時、関係者は喜びと安堵(あんど)の表情を見せた。科学技術情報通信部(部は省に相当)の長官は「地球の重力を初めて脱して月に向かうタヌリは、韓国の宇宙探査の歴史の第一歩として刻まれることとなるだろう。タヌリが全ての任務を成功裏に成し遂げるまで、政府は支援と努力を惜しまない」と話した。尹大統領も「タヌリは新資源大国・宇宙経済時代を前倒しする韓国の先発隊だ」と喜びをあらわにした。
科学技術情報通信部と韓国航空宇宙研究院は今月19日、タヌリが17日午前2時45分ごろ、月に近づくための軌道に投入されたと発表した。今回、進入した軌道は、タヌリが月の重力上で安定し、月を通り過ぎないようにする最も重要な軌道だった。この過程でエンジンンを利用してタヌリの速度を落とし、目標とする位置まで正確に合わせていかなければならず、高難度な技術を必要とした。減速がうまくいかなければ宇宙に飛び出し、過度に減速すれば月に衝突する恐れがあった。同研究院の研究チームは、タヌリが1次計画の軌道に乗った後、約2日間にわたって軌道情報を分析。19日に速度を時速8000キロメートルから7500メートルに落とし、だ円軌道へと向かわせることに成功した。タヌリが月の重力上で安定したことも確認された。韓国紙の東亜日報は「タヌリが正真正銘の『月探査機』となった」と伝えた。
タヌリは目標とする月の上空100キロの周回軌道に乗るために、今後さらに投入作業を4回行う。同研究院の関係者は東亜日報の取材に「最後まで緊張を解くことができない。残された動作も重要だ」と話し、気を引き締めた。
今年1年、韓国は宇宙事業で飛躍的な成果を上げた。タヌリの打ち上げに先立ち、今年6月には韓国が独自開発した初の国産ロケット「ヌリ号」を打ち上げ、搭載した衛星を目標の軌道に乗せることに成功。国内は「自力で衛星の打ち上げが可能な世界7番目の国になった」と歓喜に沸いた。
尹大統領は先月、「未来宇宙経済ロードマップ」を発表し、「宇宙航空庁」の新設のほか、月や火星への着陸を目標に掲げた宇宙政策を打ち出した。尹氏は「2045年には火星に太極旗(韓国の国旗)を立てる」と意気込んでいる。
尹氏は韓国を「宇宙強国」に飛躍させるための2045年までの政策方向を提示。5年以内に月に向けて飛行できる独自のロケットエンジンを開発して2032年に月に着陸し、資源の採掘を開始するとした。その上で、▼月と火星の探査▼宇宙技術強国への飛躍▼宇宙産業の育成▼宇宙産業に携わる人材の養成▼宇宙安全保障の実現参加▼国際連携の主導といった6つの政策方向と支援策を示した。
また、科学技術情報通信部の傘下に専門家を中心に構成する宇宙航空庁を新設することを表明した。同庁の新設は尹氏の先の大統領選での公約でもある。同庁は、現在、国防部、科学技術情報通信部、防衛事業庁、韓国航空宇宙研究院など、各省庁に分かれている宇宙政策を統括する役割を担う。いわば、NASA(米航空宇宙局)の韓国版だ。
政府は特別法によって同庁を設立する方針で、来年の前半に法案を国会に提出し、特別法が成立すれば、関係法令を整備して、来年末までに同庁を発足させたい考えだ。
Copyrights(C)wowkorea.jp 3