<W解説>韓国・ソウルの中華料理店に中国の「秘密警察署」の拠点がある?=駐韓中国大使館は全否定(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国・ソウルの中華料理店に中国の「秘密警察署」の拠点がある?=駐韓中国大使館は全否定(画像提供:wowkorea)
韓国の有力紙、朝鮮日報は、中国が反体制派の人物を弾圧するための「秘密警察署」を世界各地に展開させているとされる中、韓国でもソウルのとある中華料理店が拠点となっているものと見て、韓国の防諜(ぼうちょう)当局が調査を進めていることがわかったと報じた。同紙は「米国や日本、欧州連合(EU)などは、この問題をめぐって中国側に真相究明を求めているが、それに比べ、韓国の対応は緩やかだとの批判が出ている」と伝えている。

 中国秘密警察署は中国の政権に批判的な在外中国人の言動や行動を日々チェックし、場合によっては強制的に帰国させることを任務としているとされる。スペインの人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」がこのほど発表した報告書では、秘密警察署が世界53か国102か所に拠点を置いているとし、韓国にも中国・南通市公安局が秘密警察署1か所を運営していると指摘した。報告書は、在外中国人への人権侵害にとどまらず、中国共産党政権によるこうした活動が国際法の原則に違反し、第三国の主権を侵害していると批判している。

 駐在国政府を通さない領事活動や自国民調査は主権侵害で、仮に秘密警察の存在が事実であれば内政干渉に該当する。

 セーフガード・ディフェンダーズは今年1月にも中国政府が2014年以降、政権批判を続けたとして、在外中国人約1万人を強制的な手段で帰国させたと明らかにした。また帰国に至る過程で、監視対象者の家族や親族などが中国国内で不当な嫌がらせなどに遭っている可能性を指摘した。

 米連邦捜査局(FBI)は先月、米国内に中国の秘密警察署が存在することを既に把握しているとし、このことは主権侵害にあたるとして懸念を示した。これに対し、駐米中国大使館は、在米中国人に対して運転免許書の更新や健康診断の受診などのサービスを支援しているに過ぎないと反論した。

 また、オランダやアイルランド、チェコは既に秘密警察署の閉鎖命令を下したという。日本でも外務省が今月18日、「東京など2か所の秘密警察署を確認し、中国側に主権侵害だと抗議した」と明らかにした。これに中国外交部は22日、「いわゆる中国の海外警察署は存在しない、中国は内政不干渉の原則と国際法を遵守している」と主張した。

 こうした中、朝鮮日報は、韓国にもソウル市のカンナム(江南)のとある中華料理店に秘密警察署の韓国拠点があるとみて、韓国の防諜当局が調査に乗り出したと伝えた。同紙によると、中国人が経営しているこの料理店は、建物・メニューなど、外から見る限りではソウルの一般的な中華料理店と大差ないという。しかし、中国の秘密警察署の存在が世界的にささやかれ始めるようになってから、店側は突然、来年初めに工事のため営業を一時中断すると発表。その後、今月末で営業を終了することが明らかになり、不可解な動きが見せている。

 一方、駐韓中国大使館は23日、報道官名義の声明を出し、「いわゆる『海外警察署』は一切存在しない」と秘密警察署の存在を否定した上で「中国の公安・検察と、韓国の警察・検察が緊密な意思疎通のルートを構築し、高いレベルでの協力関係を維持している」と強調。秘密警察署の韓国拠点が存在するとの報道について「メディアが騒ぎ立てている、噂による意図的なねつ造」と批判した。

 韓国外交部は25日、「外国機関などの韓国での活動は、関連する国内および国際規範を遵守して行わなければならないというのが韓国政府の確固たる立場」とし「関連する動向に注目しており、韓国国内の関連機関などとも必要な疎通をしている」と説明した。22日の段階では「事実確認が優先」としていたが、やや進んだ立場を示した形だ。秘密警察署の存在が事実であれば、ウイーン条約など国際規範や国際法に反していることになる。韓中関係に影響が出る問題でもあり、慎重かつ徹底した調査が必要だろう。

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