韓国軍は警告射撃を実施した上で戦闘機や攻撃ヘリコプターを投入。ヘリは20ミリ砲約100発を撃ったが、撃墜には失敗した。また、無人機への対応で出動した韓国空軍の戦闘機1機が離陸後に墜落。操縦士2人は緊急脱出して無事だったが、韓国軍の対応体制が不十分との指摘が出ている。ミサイルや戦闘機を前提とした既存の態勢では撃退が難しく、今回、防衛に穴があることが浮き彫りとなった形だ。
無人機は幅2メートル以下で、高度3キロメートル前後の空域を時速100キロメートルで飛行した。今回の北朝鮮による無人機飛行について、韓国の専門家の間では、北朝鮮がミサイル発射などに加えて、様々な手段で挑発を繰り返している中、分散した作戦を余儀なくされた際に、韓国軍がどの程度対応できる能力を持っているのか見極める意図があったとの見方が出ている。また、北朝鮮が偵察能力の強化を図ろうとしていることから、その一環の動きではないかとの指摘や、北朝鮮軍が行っている冬季訓練の一環との見方を示す専門家もいる。
聯合ニュースが27日、韓国軍関係者の話として伝えたところによると、北朝鮮の無人機は韓国の領空を侵犯した際、ソウル・ヨンサン(竜山)の大統領室庁舎一帯を撮影した可能性が高いという。聯合は「最高レベルの防空網を維持すべきソウルの中心部にまで侵入されたことに批判が起きているほか、軍が無人機対応手順を守って正常に作戦を遂行したのかとの疑問も提起されている」と伝えている。
韓国軍は北朝鮮の無人機侵入を受け、F15KやKF16といった戦闘機や軽攻撃機KA1、攻撃ヘリコプターなど約20機の軍用機を出動させ、ヘリによる射撃で撃墜を試みたが失敗した。韓国軍関係者は「北朝鮮の無人機を識別したが、民家との隣接地域、都心地域だったため、撃破射撃ができなかった」と弁明したが、韓国軍合同参謀本部のカン・シンチョル作戦本部長は27日、「結果的に軍の対応態勢が不十分で国民に多大な心配をおかけした」と陳謝した。その上で、今後の方針に関して説明し「敵の無人機に備え、各部隊の探知・打撃装備の運用を点検する。探知装備は初期から無人機を探知できるよう積極的に運用し、打撃装備を攻撃的に投入する」と強調。「民間に被害を与えずに撃墜できる戦力を効果的に統合運用し、定期的に合同防空訓練を実施する」とした。
韓国では2017年6月にも、北東部の山中で北朝鮮の小型無人機が発見された。南部ソンジュ(星州)に配備された在韓米軍の最新鋭ミサイル防衛システム「最終段階高硬度地域防衛(THAAD)」の発射台や周辺の画像などが残されていた。
ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は27日、軍の態勢を増強する考えを示した。同日の国務会議で尹氏は「ここ数年、韓国軍の態勢と訓練が非常に不足していた。(今回同様、北朝鮮無人機による領空侵犯があった)2017年以降、ドローンへの対応能力と戦力構築がろくに行われず訓練は皆無だった。北の善意と軍事行為だけを頼りにする対北政策はどれほど危険なものか、わが国民はしっかりと見たことだろう」と述べ、暗にムン・ジェイン(文在寅)前政権の対北政策を批判した。
その上で、尹氏は、主要軍事施設を監視・偵察できるドローン部隊の創設計画を最大限に前倒しし、ドローンがレーダーなどに探知されないようステルス化して監視・偵察能力を強化する考えを示した。
韓国・統一研究院のホン・ミン北朝鮮研究室長は「(北朝鮮は)韓国の虚を突く方法で偵察能力を示した」と指摘した。韓国軍は今回浮き彫りとなった「防衛の穴」を埋めることが急がれる。
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