李氏は、2008年2月25日~2013年2月24日まで、第17代大統領を務めた。出身は大阪で、戦後、日本から引き上げた後、苦学して名門・コリョ(高麗)大学を卒業。当時、草創期にあった現代グループの現代建設に入社し、頭角を現して36歳の若さで社長に就任した。
退職後に政治家に転身し、1992年から国会議員を務め、2002年からソウル市長を1期務めた。2008年に大統領に就任し、「経済大統領」として「韓国747計画」を推進。747計画は、毎年平均7%の経済成長、1人あたり4万ドルの国民所得、そして韓国を世界7大経済大国にするというものだった。しかし、在任中、米国産牛肉の全面的な輸入再開方針を決定したことが国民の猛反発を受け、支持率が一時は2割台に下落。連日、大規模な抗議デモが続き、韓国社会に混乱を招いた。また、リーマン・ショックによる世界同時不況とそれに伴う景気悪化、株価下落や急激なウォン安に苦慮するなど、期待された「経済大統領」としての手腕を十分に発揮できなかった。
そして、任期も終盤に差し掛かった2012年8月、現役の大統領として初めて、韓国が領有権を主張する島根県の竹島(韓国名・独島)に上陸。島は韓国領だと改めて主張した。李氏はそれまで滞っていた日韓間のシャトル外交を復活させるなど、対日外交で成果も上げたが、竹島上陸以降、日韓関係は一気に冷え込んだ。
その李氏は、財閥大手のサムスングループなどから巨額の賄賂を受け取り、会社の資金を横領したとして2018年3月に逮捕・収監された。そして2020年10月、収賄や横領の罪で懲役17年の実刑判決が確定した。
しかし、その後、持病が悪化して入退院を繰り返すようになり、昨年6月、健康状態の悪化が考慮され、刑執行停止が決定。李氏は実刑判決を受けてから約1年7か月ぶりに釈放された。韓国の刑事訴訟法は、高齢だったり、刑の執行で健康を害す恐れがあったりする場合に、懲役刑の執行を停止できると定めている。
そして李氏は新年の特別赦免の対象となり、12月28日付で、残り15年の刑期と未納の罰金が免除された。選挙権や被選挙権も回復した。李氏の特別赦免を決定したユン・ソギョル(尹錫悦)大統領には、特赦の実施で保守層からの支持を集めたい思惑もあるとみられている。
これまで、実刑確定後に特赦を受けた元大統領は、李氏のほかチョン・ドゥファン(全斗煥)、ノ・テウ(盧泰愚)、パク・クネ(朴槿恵)の3氏いる。
一方、野党は李氏の特赦が決定したことに反発し、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は「国民の常識と期待を裏切る恩恵恩赦は、全面撤回しなければならない。不公正な権力乱用は、国民主権、民主主義を破壊する罪悪」と批判した。
李氏は先月30日、入院していたソウル市内の病院を退院してソウル市内の自宅に戻った。車から降りると、李氏に近い保守系与党「国民の力」の議員や支持者らから出迎えを受けた。李氏の赦免の理由の一つは健康悪化だったが、元気な様子を見せ、集まった支持者と握手を交わした。車から降りた後は、自分で自宅まで歩いた。記者団の取材に、国民への謝罪と感謝の気持ちを伝えた後、「わたしは韓国の繁栄のため、韓国のために祈ることで役割を果たしたい」と語った。一方、特赦の決定についてコメントを求められると、「今はこれ以上言うことはない。今後話す機会があるだろう」と述べるにとどめた。
尹大統領が今回、同じ保守系の李氏を赦免としたことが、今後の求心力拡大につながるのか注目される。
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