<W解説>日本からも見えた閃光は韓国軍が打ち上げた固体燃料ロケットだった=偵察衛星の実用化へ(画像提供:wowkorea)
<W解説>日本からも見えた閃光は韓国軍が打ち上げた固体燃料ロケットだった=偵察衛星の実用化へ(画像提供:wowkorea)
韓国国防部(部は省に相当)は12月30日、独自の技術で開発した固体燃料ロケットの打ち上げ実験に成功したと発表した。固体燃料によるロケットの実験は今年3月に行って以来、今回が2回目。国防部は、偵察衛星の実用化などに向け、今後数年かけて固体燃料ロケットを完成させるとしている。一方、今回、打ち上げについて事前に通知がされていなかったため、韓国のほか、日本からも光が上空に上がっていったとの目撃情報が相次ぎ、SNSでも「未確認飛行物体を目撃した」「空に謎の光」などといった投稿が多数上がった。国防部は「打ち上げ前、発射経路と関連のある領空や海上には安全措置を取ったものの、軍事保安上の問題で、実権を事前に広く通知できなかった」と釈明している。

韓国は昨年、米国とロケットへの固体燃料の使用などを制限した指針の撤廃で合意し、開発に着手した。固体燃料ロケットは、液体燃料に比べて安価で単純な構造のため、大量生産もしやすい。また、事前の燃料注入などの作業が不要で、発射準備に時間がかかる液体燃料とは異なり、素早く発射できる利点もあるという。

3月の実験ではベアリング分離、段階分離、上段部(Upper stage)姿勢制御技術などが検証され、今回は追加の技術検証が行われた。3月に次ぐ実験成功で、韓国は独自の偵察衛星の確保に向け、さらに一歩踏み出したといえる。国防部は「監視や偵察などの国防力強化のため、今後、数年間の開発過程を経て、成果を示したい」としている。

偵察衛星は北朝鮮がミサイル発射など、挑発行為を繰り返している中、宇宙から北朝鮮のミサイル基地や核実験場など、主要施設を監視する「目」の役割を果たすものと期待されている。韓国軍は重量800キロ程度の大型の偵察衛星5基を確保する計画で、配置されれば、韓国軍は2時間ごとに北朝鮮の主要施設の情報収集が可能となるという。現在、韓国は独自の偵察衛星を持たないため、北朝鮮に関する衛星情報の8割以上を米国をはじめとする海外に頼っているのが現状だ。

偵察衛星の開発と打ち上げは、韓国軍の監視・偵察能力の強化を支える重要な事業と位置付けられている。また、北朝鮮のミサイル発射の兆候を探知して先制攻撃する「キルチェーン」でも中核的な役割を担う。ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、北朝鮮の核・ミサイル挑発に対抗するため、キルチェーンを含む防衛・反撃システム「3軸体系」を再構築する方針を示している。

韓国型3軸体系は、キルチェーンのほか、発射されたミサイルを迎撃する韓国型ミサイル防衛体系(KAMD)、北朝鮮から攻撃された場合に指導部などに報復攻撃を行う大量反撃報復(KMPR)からなる。

イ・ミョンバク(李明博)政権の2012年、米韓安保協議会会議(SCM)で李氏は北朝鮮のミサイルや長射程砲を迎撃する「積極的抑止」の概念の「キルチェーン」を2015年までに構築すると発表。続くパク・クネ(朴槿恵)政権が2016年9月に大量反撃報復を加え、「3軸体系」の概念が完成した。

しかし、北朝鮮との関係改善を図ろうとしたムン・ジェイン(文在寅)前政権下では、北朝鮮への刺激を避けるため「3軸体系」の名称を「核・WMD(大量破壊兵器)対応体系」に変更した。政権が変わり、尹政権は「力による平和を実現する」として3軸体系の名称を復活させた。尹大統領は「3軸体系は有効な防御体系」と強調している。

今回の固体燃料ロケットの打ち上げ実験成功は、核・ミサイル開発を加速する北朝鮮に対する強い警告のメッセージになると評価する声も上がっている。しかし、北朝鮮は韓国軍が実権を成功させた翌31日、首都・ピョンヤン(平壌)近郊から、短距離弾道ミサイル3発を北東の方向に発射した。いずれも排他的経済水域(EEZ)の外側の日本海に落下したとみられる。韓国軍の固体燃料ロケットの打ち上げ成功に対抗する狙いがあるとの見方を伝えた。さらに今月1日にも短距離弾道ミサイル1発を発射した。年末年始に2日続けて軍事行動を取る、異例の事態となっており、日米韓などは、北朝鮮が昨年以上に軍事的挑発を活発化させる可能性もあるとみて警戒を強めている。

北朝鮮も軍事偵察衛星の運用実現を掲げており、昨年2、3月に偵察衛星のための試験を実施したことを発表。先月18日には偵察衛星の打ち上げ実験と称してミサイル2発を発射している。

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