元徴用工訴訟をめぐっては、韓国の大法院(最高裁判所)が2018年11月に三菱重工業に対し、原告への賠償を命じた。しかし、賠償問題に関し、日本としては1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、同社は履行を拒んだ。このため、原告側は2019年1月に韓国内にある同社の資産の差し押さえと売却(現金化)に向けた手続きに踏み切った。2019年3月、中部のテジョン(大田)地裁は同社の韓国内資産である商標権2件と特許権6件の差し押さえを決定した。同社側は差し押さえ命令を不服として即時抗告したが、同地裁がこれを棄却。同社は地裁の判断を不服として大法院に再抗告したが棄却された。
これに伴い、同地裁は原告2人が求めていた計約5億ウォン(約5200万円)相当の同社の商標権と特許権の売却命令を決定した。同社側はこれに対しても抗告したが、棄却され、昨年4月、大法院に再抗告した。一方、大法院は再抗告についての判断を下していない。
しかし、仮に現金化がなされれば日本政府は制裁措置を取る構えで、そうなれば日韓関係は破綻するとさえ言われている。そのため、現金化は絶対に避けなければならないという認識では日韓両政府とも一致している。
韓国は解決策を模索する中で、韓国の財団が元徴用工訴訟の被告である日本企業の賠償金を肩代わりする案を「有力案」とし、現在、原告側にこの案を提示するなどしている。韓国の外交部(外務省に相当)は11月29日と先月13日に相次いで「(解決策は)以前よりも絞られた」との見解を示した。
こうした中、尹大統領は朝鮮日報のインタビューに応じ、両国間の協議の行方を「肯定的に見ている」と語った。その上で尹氏は「日本企業の(資産の)現金化問題だけ解決できれば、首脳の相互訪問を通じて、多方面にわたり日韓関係の正常化への扉を開くことができる」と述べた。
かつて日韓では、首脳が相互訪問して会談する「日韓シャトル外交」が展開されていたこともあった。故ノ・ムヒョン(盧武鉉)大統領と小泉純一郎首相との間で始まり、鹿児島県の指宿市やソウルなどで会談を重ねたが、小泉氏の靖国神社参拝に盧氏が反発して立ち消えとなった。イ・ミョンバク(李明博)大統領はシャトル外交を再開したが、2011年12月に京都で行われた野田佳彦首相との会談で慰安婦問題をめぐる応酬となり、以後、断絶した。ムン・ジェイン(文在寅)前大統領は安倍晋三首相と再開に合意したが、本格的な実現には至らなかった。
尹氏はインタビューで「我々はもちろんだが、日本も過去のとても良かった韓日関係に戻ろうとしている」との見方を示した。
こうした中、産経新聞は1日、元徴用工訴訟問題をめぐり「早ければ1月中に韓国政府が解決策を公表する意向を日本側が示していたことが31日、わかった」と報じた。同紙は「日本企業の敗訴が確定した韓国最高裁判決から4年超を経て、問題解決に向けて大きく前進する可能性がある」と伝えている。
同紙によると、先月26日に韓国外交部(部は省に相当)アジア太平洋局のソ・ミンジョン局長は外務省の船越健裕アジア大洋州局長と会談した際、原告団や有識者らが参加する公聴会で意見を聴取した後、速やかにこの問題の結論を出す意向を伝えたという。公聴会では、前述した「韓国の財団が元徴用工訴訟の被告である日本企業の賠償金を肩代わりする案」が示される見通し。ただ、公聴会の具体的な日程は示されなかった。被告の日本企業の資金拠出や謝罪を要求している原告側が反発するのは必至だが、同紙によると、韓国政府は公聴会を「結論に至る手続きの最終段階」と位置付けているという。
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