<W解説>今や無類の強さを見せる、韓国囲碁界の発展を支えた明知大学・囲碁学科が廃止の危機(画像提供:wowkorea)
<W解説>今や無類の強さを見せる、韓国囲碁界の発展を支えた明知大学・囲碁学科が廃止の危機(画像提供:wowkorea)
韓国の有力紙、朝鮮日報は先月29日付のコラムで、世界で唯一という韓国・ミョンジ(明知)大学の「囲碁学科」の廃止に向けた動きを惜しんだ。近年、韓国は囲碁界で急成長し、若手の活躍が著しい。囲碁界での韓国の台頭を語る上で明知大囲碁学科の存在は切っても切り離せない。コラムを執筆したイ・ホンリョル囲碁専門記者は「それなりの事情はあろうが、これまで華やかだった成果を自ら否定する感はぬぐえない」と学科廃止に向けた動きを批判した。

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囲碁は3000年ほど前に中国で生まれたとされ、5、6世紀に朝鮮半島を経由して日本に伝わった。20世紀まで囲碁の実力は日本が世界ナンバーワンだった。20世紀初め、プロ組織があったのは日本だけだったため、韓国や中国から多くの人材が日本にやってきた。1941年に日本のプロ初段となった韓国のチョ・ナムチョルは1943年に韓国に戻り、同年に1945年に囲碁団体、ハンソン(漢城)棋院を設立した。1947年に朝鮮棋院、1949年に大韓棋院と名前を変え、1954年には、韓国のプロ集団の総本山、韓国棋院が設立された。当時の韓国では、日本ルールによる「現代囲碁」と、あらかじめ白黒16個の置き石をした上で対局を始める、「スンジャン・パドゥク(巡将碁)」と呼ばれる伝統的な囲碁が混在しており、チョらは「現代囲碁」の普及を目指した。

1956年に始まった新聞棋戦国手戦ではチョが9連覇したのに続き、1959年に始まった覇王戦や最高位戦では日本で囲碁を学んだ韓国の棋士たちが活躍。さらに1970年代にはソ・ボンス(徐奉洙)ら韓国で育った棋士も次第に台頭するようになった。

21世紀に入ってからは韓国と中国が日本を追い越し、覇権を争うようになった。韓国では囲碁人口も増え、その数は500万人とも1000万人ともいわれている。ひと昔前までは、公園で熱心に碁を打つ高齢者の姿が日常的に見られた。「囲碁は考える力を伸ばし、学業の成績も上がる」などと考えて子供に囲碁を習わせる親もおり、韓国には囲碁の塾なるものまで存在する。プロ棋士を養成する「囲碁道場」も数多くある。食事や洗濯などの世話をしてもらえるなど、囲碁に専念できる至れり尽くせりの環境でエリート棋士が養成されている。

昨年2月には、日中韓の3か国から5人ずつが出場し対決するチーム対抗戦、ノンシン(農心)杯・世界囲碁最強戦の最終14局で、シン・ジンソ九段が、日本の一力遼(いちりき りょう)九段(現・棋聖)に対し188手で白の中押し勝ちを収め、韓国チームの逆転優勝を引き出した。シンの活躍で、韓国は通算14回目の優勝を果たした。

また、昨年11月には、2022サムスン火災ワールド囲碁マスターズで、「囲碁女帝」と呼ばれるチェ・ジョン九段が女子棋士として史上初めてメジャー世界大会の決勝進出を果たし、準優勝した。

韓国が国際棋戦で強さを発揮するようになる過程において、ソウル近郊のキョンギド(京畿道)ヨンイン(龍仁)市にある、明知大学囲碁学科の存在は欠かせない。同学科は世界初の囲碁学科として1997年に設立した。100人ほどの少数精鋭制を敷き、囲碁の普及を担う人材の育成や囲碁学の確立、囲碁教育プログラムの整備など、韓国の囲碁界を支える中心的な役割を果たしてきた。学生たちは囲碁の技能のみならず、囲碁史、囲碁教育論、囲碁文化論など、囲碁を学問として幅広く学んでいる。

しかし、先月9日、囲碁人口の減少を理由に、囲碁学科の廃止案が同大の委員会で議決された。今後、大学評議員会や法人理事会などが承認し、学生や教職員らの同意を得て、大学側が政府の教育部(文部科学省に相当)に最終案を提示し承認されれば、正式に廃止が決定する。

前述のコラムで、執筆者のイ・ホンリョル囲碁専門記者は「明知大学の『ランドマーク』として君臨してきた囲碁学科が、なぜ要石(かなめいし)から廃石へと転じたのか、残念でならない」と惜しんだ。同学科廃止への動きに、棋士や大韓囲碁協会などは反対の声を上げている。

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