韓国は1997年から98年のアジア通貨危機で経済が大打撃を受け、当時のキム・デジュン(金大中)政権はIT産業振興を経済再生の中核政策に掲げた。1999年「サイバーコリア21」計画を策定して情報インフラの整備、ベンチャー企業の育成、国民へのパソコン普及を積極的に進めた。各学校に全教職員、全教室にパソコンが導入されたほか、低額の高速インターネット接続サービスも始まった。また、政府機関の電算化も急速に進められた。このため、韓国内におけるインターネットの利用者数は1998年末の310万人から1999年末には1086万人、2000年末には1904万人に急増した。
世界に先駆けて「政府のIT化」が進められ、2002年には既に行政手続きや納税をインターネットで可能とするサービスの原型が出来上がっていた。韓国の「政府のIT化」を象徴するサービスの一つに「政府24」がある。「政府24」は、国民の誰もが行政機関を訪れることなく家や職場で24時間、365日、インターネットで必要な行政手続きの案内が受けられるほか、行政への申請や証明書の発給などができるサービスだ。国税を税務署や金融機関に出向かなくても税務申告や納付、証明書の発行などがオンラインで処理できる「ホームタックス」のサービスも国民に活用されている。
こうした取り組みもあり、昨年公表された国連の電子政府指標で、韓国は193か国の会員国中、3位となった。電子政府指標は2年に一度、国連が公表する指標で、韓国は会員国の中で唯一、2010年以降、7回連続で3位以内に入っている。2010年から2014年までは3回連続で1位となった。
電子政府指標はオンラインサービス指数(OSI)、人的資本指数(HCI)、情報通信インフラ指数(TII)で構成され、これら平均によって算出される。OSIは、申請や手続きなど政府のサービスがどの程度オンラインでカバーされているのかなどによって評価される。HCIは成人の識字率、初等・中等教育の進学率、成人人口の平均教育年数などにより評価される。TIIは100人当たりのインターネットユーザー数、100人当たりのモバイルユーザー数、100人当たりの固定ブロードバンドユーザー数により評価される。
こうして韓国は世界が認める「IT大国」となったが、ここにきて暗雲が立ち込めている。前出のOoklaによる超高速通信の速度の順位は2019年の2位から20年には4位、21年に7位と徐々に順位を下げ、昨年は34位と大幅に下落した。韓国知能情報社会振興院の2022年版白書に引用されたスピードテストの調査結果によると、22年8月に韓国は210.72Mbpsで世界19位だった。そこからわずか数か月のうちにさらに大きく順位を下げたことになる。
2022年に大幅に順位を下げた要因について、韓国の業界関係者は聯合ニュースの取材に、比較的早期に超高速インターネットを構築した韓国が光ファイバーと同軸ケーブルを組み合わせるなどしたのに対し、後発国は高速の光ファイバーケーブルでネットワークを構築した点を挙げた。順位は下げたものの、動画視聴などでユーザーが不便を感じるようになったわけではないとの認識も示した。聯合は「一方で、仮想現実(VR)コンテンツなどの増加に伴い、超高速、超低遅延の通信が求められるようになれば、各国の通信速度の差がコンテンツ体験の格差につながるとも指摘される」と伝えた。
また、産業分野においても、韓国のIT産業は半導体を除いてグローバル市場で優位を占める分野がほとんどない。韓国の「IT大国」の地位が揺らぎかねない状況となっている。
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