韓国では、新型コロナの流行以降、マスクの着用を義務化し、従わなかった場合、罰金を科す厳しい措置を取ってきた。しかし、政府は昨年5月、野外での集会やスポーツ観戦など50人以上が集まるイベントを除き、屋外でのマスク着用の義務を解除。さらに昨年9月26日からは、感染状況が落ち着きつつあることに加え、屋外でマスクの着用義務がない国が多いことなどを考慮し、屋外については全面解除した。
当時、疾病管理庁の庁長は当時「過料を科す強制的措置をなくすということであって、屋外でのマスク着用が必要ないという意味ではない」と強調。「状況に応じた個人の自主的な判断が重要になる」とし、屋外であっても密集になる場面ではマスクを着用するよう呼びかけた。街からは政府の決定に歓迎する声も聞かれた一方、再び感染が拡大することに対する恐れや自身の感染を懸念して、屋外でも引き続きマスクを着用する人が目立った。
その後も屋内でのマスク着用義務は維持されてきた。しかし、経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち、屋内の全ての空間でマスクの着用を依然「義務化」しているのは韓国のみとなっている。
こうした状況に、国家感染症危機対応諮問委員会のチョン・ギソク委員長は昨年9月、ラジオ番組に出演し、屋内でマスクが外せるのは来年の春ごろになるとの見方を示した。チョン委員長はヨーロッパで開かれた学会に出席した際、呼吸器内科医も室内でマスクをしていなかったと明かし、「韓国でも外さなければとの考えを持っているが、致死率や重症度など、状況を見ながらいつかは政府に提言することになるだろう」と述べた。その時期についてチョン氏は「来年春ごろ」とし「インフルエンザが2年間流行らなかった理由はマスクを着けていたからだ」と指摘。「今冬は少し我慢して、来年春からはみんな一緒に外せるようになるだろう」と予想した。
そのチョン氏は10月、着用義務解除の時期を「来春」と予想していた時期を事実上、前倒しする形で「あと3か月我慢すれば屋内でのマスク着用による大きなストレスから解放されるだろう」との見解を示した。それから3か月が過ぎ、現在、マスク着用義務の解除に向け、政府が決断を下そうとしている。
政府は△患者発生状況の安定化△重症患者数と死者数の減少△安定した医療対応力△高リスク群の免疫獲得の4つの指針のうち、2つ以上で基準を満たした場合、中央災害安全対策本部が議論した上で、マスク着用義務の緩和時期を決定する方針を示している。
これまで、基準を満たしていたのは「安定した医療対応力」のみだったが、「患者発生状況の安定化」の具体的指標である「1週間の新たな感染者数が2週連続で減少」という基準が先週達成された。新規感染者数は、先月の第3週は41万1195人、第4週は45万8709人、今月の第1週は41万4673人に減った。
マスク着用義務の緩和時期を決定するための条件は整い、政府は来週中にも議論を始める見通し。一方、重症患者数は増加している上、オミクロン株に対応した改良ワクチンの接種も政府の目標よりも進んでいない。また、中国で新型コロナの感染が急拡大しており、韓国政府は2日から水際対策を強化している。韓国では2020年初めに中国で新型コロナが初めて流行した当時、このことに対する初期対応が遅れ、その後、国内で感染者が急増したという苦い経験があり、今回、中国からの入国者を対象に取っている水際対策は、他国に比べても厳しいものとなっている。
前出のチョン・ギソク新型コロナ特別対応団長は、現在の中国の流行状況が屋内のマスク着用義務解除に影響を及ぼすことはないとの認識を示し、予定通り議論を始める方針を明らかにした。
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