韓国政府は、中国で新型コロナの感染が急拡大していることを受け、中国からの入国者を対象に今月2日から水際対策を強化している。PCR検査を義務付けているほか、観光用短期ビザの発給も停止している。また、中国からの入国者を管理するため、到着便をインチョン(仁川)国際空港に一元化した。それまで中国からの航空便は計65便あり、仁川のほかキメ(金海)、テグ(大邱)、チェジュ(済州)空港の韓国の地方空港と結んでいた。仁川空港以外の空港からの入国が規制され、運航される中国初の航空便は62便に減少した。
韓国では2020年初めに中国で新型コロナが初めて流行した当時、初期対応が遅れ、その後、韓国内で感染者が急増したという苦い経験がある。それだけに、米国や日本など他の国と比べても一段と厳しい措置内容となっている。
韓国では現在、新型コロナの感染状況は落ち着いており、政府は屋内におけるマスク着用義務の解除時期について決断しようとしている。屋内の全ての空間でマスクの着用を依然「義務化」しているのは、経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち韓国のみとなっている。新型コロナ特別対応団のチョン・ギソク団長は9日、今週に重症者数が安定し、減少傾向が見られれば来週中に着用義務の見直しに向けた議論を始めると明らかにした。
韓国政府は△患者発生状況の安定化△重症患者数と死者数の減少△安定した医療対応力△高リスク群の免疫獲得の4つの指針のうち、2つ以上で基準を満たした場合、中央災害安全対策本部が議論した上で、マスク着用義務の緩和時期を決定する方針を示している。これまで基準を満たしていたのは「安定した医療対応力」のみだったが、「患者発生状況の安定化」の具体的指標である「1週間の新たな感染者数が2週連続で減少」という基準が先週達成された。これにより、着用義務の解除時期の決定を議論する条件が整った。
議論を始めるにあたっても、中国における感染の急拡大は懸念材料で、実際、中国からの入国者の陽性率は一時、2桁台が続いていた。一方、前出のチョン・ギソク団長は、現在の中国の流行状況が屋内のマスク着用義務解除に影響を及ぼすことはないとし、予定通り議論を始める方針を示している。
韓国など各国が、中国からの入国者への水際対策を強化するや、中国は強く反発。中国外務省は先週、会見で「防疫措置は科学的で適切であるべきだ」とし、「(コロナ対策は)政治的に操作してはならず、差別的な方法を取ってはいけない。人の往来や交流に影響を与えてはならない」と主張した。
この会見で対抗措置も辞さない構えを示していた通り、中国政府は韓国と日本に対して、中国への渡航に必要なビザの発給手続きを停止していることが10日、分かった。在韓中国大使館は同日、対話アプリ「微信」の公式アカウントで「中国国内からの指示により、今日から在韓中国大使館と総領事館は、訪問、商業貿易、観光、医療及び個人的な事情を含む韓国国民への中国間短期ビザの発給を中断する」と明らかにした。中国外務省の報道官も10日の記者会見で「中国への差別的な入国制限措置に断固反対し、われわれも対等の措置を取る」と表明した。
これに対し、韓国外交部(外務省に相当)の当局者は「(中国の)措置を遺憾に思う」とした。また、イム・スソク報道官は「中国側の措置に対しては外交ルートを通じて協議し、意思疎通ができた。今後も韓国政府の立場を中国側に伝えながら、引き続き意思疎通していく」と述べた。9日に外交部のパク・チン(朴振)長官と中国の秦剛外相が電話会談した際、韓国の水際対策強化について見解の相違があったというが、イム報道官は「わが政府の防疫強化措置は、科学的かつ客観的な根拠に基づく」と強調した。
一方、中国側は、韓国が入国制限措置を取り消せばビザ発給の停止を見直すとしている。
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