【ソウル聯合ニュース】韓国国防部が11日に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に報告した2023年の業務計画は、北朝鮮に対する積極的な抑止力の確保と要約することができる。李鐘燮(
イ・ジョンソプ)国防部長官は北朝鮮の脅威に対し圧倒的な対応力を備えるための戦力補強計画を提示し、「北ミサイル発射前のかく乱・破壊概念の発展」「北の全地域に対する破壊能力の確保」といった、これまでの政権が公にすることを避けていた表現も用いた。同部は今年、こうした姿勢を「韓国型3軸体系」に反映させ、強化していく。 韓国型3軸体系は、有事の際に北朝鮮を先制攻撃するキルチェーン、北朝鮮の核・ミサイルからの防衛を担う韓国型ミサイル防衛体系(KAMD)、北朝鮮から攻撃された場合に指導部などに報復攻撃を行う大量反撃報復(KMPR)からなる。 軍はキルチェーンの能力強化に向け、北朝鮮がミサイル発射前にかく乱・破壊する概念を発展させることにした。 ミサイル発射前のかく乱・破壊は一般的に「レフト・オブ・ローンチ」と呼ばれる。ミサイル発射ボタンが押されるまでの一連の過程を図式化した時、「発射」の左側にある「発射前」段階で阻止することを意味する。事実上、先制攻撃に近い。 軍はサイバー・電磁波領域の能力を大幅に引き上げる計画で、遠からず米国のように、サイバー攻撃や通信網かく乱などの方法でミサイル発射直後に爆破できるようになるとみられる。国防部関係者は「物理的、非物理的な手段で北の核・ミサイルとインフラに影響を及ぼすことができるかといった部分を、技術的、概念的に検討していく」と説明した。 国防部は韓米合同演習と絡めてミサイル対応訓練を強化すると報告したほか、極超音速飛行体の重要技術の早期確保を目指すとした。北朝鮮の迎撃網を回避して発射前の段階でミサイルを迅速に破壊する計画の一環と受け止められる。 韓国型ミサイル防衛体系(KAMD)も、北朝鮮全地域からのミサイル発射を探知する能力を高めると同時にミサイル迎撃資産を拡充する方向で強化する。北朝鮮が多種多様なミサイルを取り交ぜて一斉攻撃する状況に備え、長距離地対空ミサイル(LSAM)と中距離地対空ミサイル(MSAM)を統合運用するシステムに発展させる計画だ。 北朝鮮がロシア製短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の北朝鮮版とされる「KN23」や地対地ミサイル・ATACMSに似た「KN24」、超大型放射砲と呼ぶ「KN25」など高度が異なる短距離弾道ミサイルと、それより高度が低い旧型の長距離砲を総動員して発射したとしても、下層、上層、中層で同時に迎撃できるようにする。 軍は特に大量反撃報復(KMPR)について「北の全地域の戦争指導部と核心施設などに対する破壊能力」の確保を掲げた。軍が「全地域を破壊」できる能力に言及するのは異例。 その代表的な兵器として、昨年公開された「玄武」系列の新たな弾道ミサイルが挙げられる。弾頭重量は推定で最大9トンと、核ミサイルではない在来型のミサイルの中では最強の威力を発揮するとみられる。 北朝鮮が核保有国を称して繰り返し威嚇していることから、国防部は北朝鮮が核を実際に使用することを想定して韓米抑止戦略委員会(DSC)による机上演習(TTX)も本格化する。韓米は昨年11月の定例安保協議(SCM)で同演習の定例化に合意した。 来月下旬に米国で実施する演習では、北朝鮮が核で威嚇する段階、核使用が迫った段階、核を使用する段階などをそれぞれ想定し、韓米の軍事的な対応策を講じる。21年9月が最後となっているそれまでの演習が朝鮮半島の危機管理に焦点を当てていたとすれば、今回の演習は北朝鮮が核を使用する状況に重点を置く。 韓国から国防部の室長級や政策担当者のほか、軍合同参謀本部に今月新設されたばかりの核・WMD対応本部の関係者などが参加する予定。米国側の専門家も参加することで、議論の幅と深みが増す見通しだ。 国防部関係者は「北が核使用を公言しているだけに拡大抑止論議で想定する状況の幅が広がった。政策、戦略、核運用などの専門家が集まり、どのような状況で何が妥当かを確認する過程になる」と説明した。 拡大抑止に関し、国防部は北朝鮮の核・ミサイルや米国の核戦力配備・運用状況など核関連情報の共有範囲を拡大する方針だ。また韓米国防相会談を今年3回以上開催し、米国の核手段使用の意思決定過程で韓国の意向が反映されるよう危機管理の協議体制の活性化に努める。 また、今年下半期にソウルでSCM、多国間会議「ソウル安保対話(SDD)」が開かれるのに合わせ、国防部は韓国と国連軍司令部メンバー国の国防相による会議を初開催する計画だ。 朝鮮戦争休戦協定の締結から今年で70年を迎える。国防部関係者は「70年前にできた国連軍司令部の体制を最新化する必要があるとの認識で韓米は一致している」と述べ、人員の拡充や国連軍司令部の在り方などを網羅した協議が進んでいると伝えた。 国連軍司令官は在韓米軍司令官が兼任しているため米国がこうした議論を主導することもできるが、韓米は駐留先の韓国が積極的に参加することが望ましいと考えているようだ。国連軍司令部に関する議論は、北朝鮮の挑発を抑止し、韓国政府の北朝鮮政策が国際社会から支持を取り付ける契機にもなるとみられる。
Copyright 2023YONHAPNEWS. All rights reserved. 40