韓国の外交部(外務省に相当)は12日、元徴用工問題の解決に向けた公開討論会を国会で開き、元徴用工を支援する韓国政府傘下の財団が賠償を肩代わりする解決案を有力案として公表した。
元徴用工訴訟をめぐっては、韓国の大法院(最高裁判所)が日本企業2社に対し、原告の元徴用工らへの賠償を命じた。しかし、賠償問題に関し、日本としては1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、履行に応じていない。
昨年5月、日韓関係改善に意欲を示す尹大統領が就任し、尹政権は元徴用工訴訟問題の解決に向けさまざまなアクションを起こしてきた。外交部は解決策を模索し続けた結果、韓国政府の傘下で、元徴用工らへの支援を行っている「日帝強制動員被害者支援財団」が元徴用工訴訟の被告である日本企業の賠償金を肩代わりする案を解決の「有力案」とした。
この日の討論会では、外交部(外務省に相当)からこの案の概要が示された。外交部アジア太平洋局のソ・ミンジョン局長は、被告の日本企業に賠償金を支払わせるのは事実上困難との認識を示した。また、原告側は被告企業が財団への資金を拠出することを「最低ライン」として求めているが、これについてソ氏は「日本の呼応をどの程度確保できるか、駆け引きしつつ緊密に協議している」と述べるにとどめ、可否については明言しなかった。
一方、原告側の弁護士は、政府が検討している解決案は「日本側が何も負担しない案」だとして反対の立場を示した。韓国の最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表も13日、政府が公表した案について「日本に免罪符を与える、許されない案だ」と強く批判した。
韓国メディアの報道も厳しい論調が目立った。常日頃から、現政権に批判的な論調で知られるハンギョレ新聞は社説で「政府が韓日関係改善を急ぐあまり、強制動員解決案の歴史的意味も、被害者らの苦痛に対する謝罪と慰労を無視し、解決策を押しつけるならば、韓日関係は一層悪化し、逆風を受けることになるだろう」と政府の対応を批判した。一方、朝鮮日報は「『韓国企業がなぜ日本企業の返済をしなければならないのか』との一部の反発には一理あるが、これ以外に現実的な解決策がないのも事実だ」と一定の理解を示した。
ソウルでは、複数の市民団体が13日、解決案を批判し、尹政権を糾弾するろうそく集会が開かれた。参加者は「日本のための強制動員解決策、廃棄せよ」などと声を上げた。
専門家からは、米中対立の激化と南北の緊張の高まりで日米韓の協力の強化が叫ばれている中、協力という大前提から外れる徴用工問題などは付随的なものと考えているとの指摘もある。ソウル大学日本研究所のナム・ギジョン所長は、ハンギョレ新聞の取材に「韓日関係の復元という大きな青写真をまず描いておいてそこに強制動員のようなパズルを合わせていっているのだと思う。問題は日本の岸田文雄首相の支持率が低く、日本が譲歩できる状況にないため、韓国が一方的に譲歩する形へ向かっていることだ」と語った。
こうした中、岸田首相は14日(日本時間15日)、訪問先の米ワシントンで行った内外記者会見で元徴用工問題について触れ「日韓外交当局などは今努力している。ぜひこの努力を続けてもらいたい」と述べた。首相は、韓国側が公表した解決案については評価を避けた上で、「日韓間関係を健全な形に戻し、さらに発展させていくため、韓国政府と引き続き緊密に意思疎通を図っていきたい」と語った。
首相の発言を受け、韓国メディアのイーデイリーは「両国最大の懸案である元徴用工問題を早急に解決し、関係を回復しようとする意図がうかがえる」とした上で、両国の懸案を解決したその先にある日韓関係の改善のために、「カギは元徴用工問題に関して日本がどの程度応じるかにかかっている」と指摘した。
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